鍼灸師の新たなキャリア!機能訓練指導員のメリットと資格要件とは?

監修者:菅野 幸治
鍼灸治療 楓鈴堂院長/鍼灸師/機能訓練指導員

<主な活動・経歴>
公益社団法人 日本鍼灸師会 地域ケア推進担当業務執行理事
公益社団法人 東京都鍼灸師会 副会長
三多摩西支部 支部長 支部長保険指導員

株式会社 共同介護支援事務所
代表取締役 管理者 主任ケアマネージャー

「収入を増やしたい」「働き方を変えたい」と悩んでいるものの、​鍼灸師の資格や経験をムダにしたくはないですよね​。

鍼灸師として働きたい方にとって、介護施設等で働ける機能訓練指導員は新たな選択肢かもしれません。​

本記事では、新たに鍼灸師が機能訓練指導員として働ける背景や、なるための要件、仕事内容について解説します。​

目次

機能訓練​指導員とは​

機能訓練​指導員とは、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者を指します。

主に、高齢者や体が不自由な方が、食事や着替え、歩くことなどを自分でできるようにサポートします。

介護保険法によって職種の1つとして定められていますが、「管理者」や「生活相談員」と同じく、あくまで職種名であり、資格(名)ではありません。

近年では、令和3年の介護報酬改定により、高齢者の自立支援や重度化防止が強化され、機能訓練指導員の役割は今後さらに注目となることが期待されています。

鍼灸師が機能訓練指導員に​なれるように​なった背景とは?​

平成30年度の規制緩和より新たに機能訓練指導員の対象となる資格に「一定の実務経験を有するはり師、きゅう師」が追加されました。

それまで、鍼灸師は、機能訓練指導員にはなれませんでしたが、主に2つのことが理由に鍼灸師もなれるようになりました。

①介護業界における人材不足の解消

少子高齢化により、若手人材の不足が深刻化しています。

看護師や理学療法士、作業療法士などは機能訓練指導員になれるものの、そのほとんどが病院などの医療機関へと流れてしまっています。

こうした状況を受け、機能訓練指導員の人材不足に悩む介護業界の課題を解決するために、新たに鍼灸師も機能訓練指導員として適任と判断されるようになりました。

②身体的なケアを鍼灸師は得意分野であるため

鍼灸師が機能訓練指導員として加えられた背景には、身体的ケアが鍼灸師と重なる分野であることも大きな要因です。

鍼灸師は、解剖学や運動療法に詳しく、ケガや痛みの回復訓練にも対応できるため、機能訓練指導員としての役割をしっかり果たすことができます。

また、介護の現場ではさまざまなケアが必要とされますが、鍼灸師の知識や技術がそのニーズに応え、幅広く役立つと考えられます。

機能訓練指導員に​なるための方法​

機能訓練指導員として働くには、まず指定の資格を保有していることが条件です。

機能訓練指導員として適任と判断される資格
  • 看護師または准看護師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • あん摩マッサージ指圧師
  • 柔道整復師
  • 鍼灸師 ※実務経験6ヶ月以上が必要

また、鍼灸師の資格を持っていることに加え、鍼灸師以外の資格※を有する機能訓練指導員がいる事業所で、6か月以上働き、機能訓練指導の実務経験があることが必要です。
※鍼灸師以外の資格とは?→理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師

そのうえで、施設管理者から機能訓練指導員として適任であると判断される必要があります。

機能訓練指導員の適任者を判断できる資格保有者には、「柔道整復師」や「看護師」などが挙げられます。

ここで注意すべきなのは、鍼灸師には機能訓練指導員の適任者を判断することができない点です

※実務時間・日数や実務内容に対して細かな規定はありません。

機能訓練指導員は資格ではなく、資格という形での正式な証明書が発行されるわけではありません。

しかし、機能訓練指導員として働くためには証明書の提出を求められることがあります。

そのため、事前に証明書を発行してもらえるかを確認しておくことが大切です。

せっかく6カ月間の実務経験を積んでも、証明書を受け取れなければ、次の職場で機能訓練指導員として働くことができなくなります。

そうならないためにも、あらかじめ証明書の発行について確認し、サインをもらうようにしましょう。

なお、日本鍼灸師会では、機能訓練指導員の証明書として使用できるフォーマットが用意されています。

機能訓練指導員として適任と判断をされた機会があれば、ぜひ活用してください。

機能訓練指導員「実務経験証明書」について」 – 公益社団法人 日本鍼灸師会

機能訓練指導員の​需要はある?​

高齢化による医療費や介護費の負担を軽減するために、機能訓練による介護予防の重要性が高まっています。

デイサービスや特別養護老人ホームでは、法律により、施設ごとに少なくとも1人の機能訓練指導員を配置することが義務付けられています。

こうした背景のもと、鍼灸の技術を活かした機能訓練は、高齢者の健康に役立つ方法として期待されていくでしょう。

主な働き先は「介護関連施設」

機能訓練指導員が活躍できる場所は、主に以下の介護施設や医療系施設です。

機能訓練指導員の鍼灸師の主な働き先

【介護施設】

  • 特定施設(介護付き有料老人ホームなど)
  • 特別養護老人ホーム
  • 認知症対応型通所介護
  • 短期入所生活介護施設
  • ショートステイ(短期入所介護施設)
  • 地域密着型(小規模)通所介護

【医療系施設

  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 通所リハビリテーション

鍼灸師が機能訓練指導員として活躍できる場所には、さまざまな介護施設や医療系施設があります。

ただし、すべての施設で鍼灸師の求人があるわけではありません。

特に医療系の施設では、看護師や理学療法士、作業療法士などが優先的に採用されることが多く、鍼灸師が機能訓練指導員として働ける機会は限られることもあります。

そのため、鍼灸師が機能訓練指導員として活躍する場は、主に介護施設が中心になるでしょう。

求人の数はどうなの?​

大手求人サイトでは、「機能訓練指導員」を募集要件や仕事内容に含む求人が多く掲載されています。

厚生労働省の調査によると、理学療法士や作業療法士を含む機能訓練指導員として働く人の数は、2010年の約2万人から2016年には約5万3千人へと大きく増加しています。

今後、高齢者の増加が見込まれることから、鍼灸師を機能訓練指導員として採用する求人もさらに増えていくでしょう。

機能訓練指導員を目指す鍼灸師必見!日本鍼灸師会の研修とは?

日本鍼灸師会の研修では、介機能訓練指導員になる鍼灸師を対象にした研修を定期的に行っています。

ただし、この研修は機能訓練指導員として適任と判断をうけるためのものではありません。

あくまで、実際の現場で求められる知識や技術を学ぶことを目的としているため、研修を受けても機能訓練指導員として適任と判断されるわけではないので注意してください。

研修では、動プログラムの作成や計画表の書き方、介護制度の基本知識などを学ぶことができます。

また、ケアマネジャーや医療系リハビリスタッフとの連携方法についても詳しく学べるため、デイサービスでの引き継ぎや介護現場での実践に役立ちます。

たとえば、5人1組のチームで、それぞれの役割を決めながら1つの目標に向けた実践的なケアトレーニングが行われます。

資格の取得を目的とするものではありませんが、現場で即戦力となるための学びを得られる研修です。

研修の受講を検討している方や、これから機能訓練指導員としてのキャリアについて知りたい方は、お問い合わせすることをおすすめします。

お問い合わせ – 公益社団法人 日本鍼灸師会

機能訓練指導員の研修日程について: 機能訓練指導員 研修 – 公益社団法人 日本鍼灸師会

まとめ

機能訓練指導員は、鍼灸師としての知識や技術を活かしながら、介護現場で活躍できる職種です。

高齢化が進む中、介護施設での需要も高まっており、将来性のある分野といえるでしょう。

機能訓練指導員として働くには、指定の資格と6カ月以上の実務経験が必要ですが、日本鍼灸師会の研修を活用すれば、実践的な知識を学ぶことができます。

ただし、研修を受けるだけでは機能訓練指導員として適任と判断されるわけではない点には注意が必要です。

これからのキャリアを考えている鍼灸師の方は、機能訓練指導員という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか?

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