「鍼灸師として、療養費支給申請書は書けるべきだがわからない」「この書き方で合っているのか不安」「療養費支給申請書以外に必要な書類と提出方法がわからない」とお悩みではないでしょうか?
特に、初めて申請をする場合、ルールや手続きが複雑であるため、正しくできているのか不安でストレスを感じるかと思います。
そこでこの記事では、療養費申請書の書き方や提出方法、申請のタイミングについてまとめてご紹介します。
また、必要な申請書類のダウンロードできるサイトもご紹介するため、 これを読み終わるときには、自信を持って提出することができます。
(鍼灸)療養費申請書と合わせて必要な提出書類一覧
それではまず、療養費支給申請書を申請するときに必要な書類を確認しておきましょう。
<必要な提出書類一覧>
①療養費支給申請書(レセプト)
- 印鑑が作成に必要
- 療養費支給の振込先である銀行口座(番号)を記入する欄があります
- 施術所の登録記号番号が必要で、受領委任払いの申請により入手が必要
※受領委任払い申請の方法について、厚労省より案内されています(案内はこちら)
②同意書(原本)
- 初回または再同意のタイミングで必要
- 医師から記入してもらった同意書の原本のみ可(コピー不可)
③総括表
- 保険者に対して、いくら請求したいのか料金と件数をわかりやすくまとめたもの
- 施術報告書は厚労省HPにて入手可能
- 総括表(I):保険請求先である全ての保険者情報を載せるもの(ダウンロード)
- 総括表(Ⅱ):保険者ごとに請求額を記入し、それぞれを別々に作成するもの(ダウンロード)
- 総括表が不要な場合もある
④施術報告書
- 医師に保険の再同意を依頼するタイミングで必要な書類(保険の再同意は6ヶ月ごとに必要)
- 原本を医師に提出し、コピーを保険者に提出しなければならない
- 施術報告書は厚労省HPにて入手可能 (施術報告書の例)
⑤往復内訳表
- 往診料を請求する場合に限り必要
- どんな経路で、どの順番、どれぐらいの距離で往診したのかを報告するためのもの
- 往療内訳表は厚労省HPにて入手可能 (往療内訳表をダウンロード)
療養費支給申請書(レセプト)の ダウンロード先
療養費支給申請書(レセプト)は厚生労働省のホームページで入手できます。
団体に加入しないと手に入らないものではありません。
無料で誰でも手に入れることができます。
療養費申請書の書き方
療養費支給申請書のダウンロードが済んだら、さっそく書き方を説明していきます。
実際の画像を使って解説するので、安心して進めてください。
施術者が記入する項目
療養費支給申請書を作成する際、以下の赤い枠を記入しなければいけません。
青色の枠には、記入しなくてもよいとされています。
ただし、例外として「公費負担者給付番号」「公費受給者番号」「市区町村番号」「受給者番号」について、自治体ごとの医療費の助成金制度を使う場合は、記入が必要になる可能性があります。
たとえば、大阪市では子どもの医療費助成金制度があり、この制度を利用した保険診療を行った場合は記入が必要でした。※
※2024年時点
自治体の医療サービスにおける助成金制度を利用する場合は、事前に保険者に確認しておくことをオススメします。
【はり・きゅう用】
【あんま・マッサージ用】
療養費申請書の記入例
( 年 月分):申請年月
申請したい年の月を記入します。
例えば、2024年8月1日~2024年8月31日の分を申請する場合、【令和6(2024)年8月分】と記入します。
機関コード
機関コードは、記入する必要がないことがほとんどです。
自治体(都道府県)によっては、記入を求められるので、管轄の保険者に確認することをおすすめします。
社国・公費・後高・退職
マルを付けるのは、患者さんが入っている保険者によって違います。
患者さんの保険証など確認し、使われる保険にマルを付けましょう。
- 社国⇒全国健康保険協会、国民健康保険、船員保険
- 公費⇒公費負担医療制度(単独公費の場合のみ)
- 後高⇒後期高齢者医療制度
- 退職⇒国民健康保険法における退職者医療
2 本外、4 六外、6 家外、8 高外一、0 高外7
これは、患者さんの年齢や続柄、提供される医療保険に応じてマルを付けるものとなります。
たとえば、
8 高外一→70 歳以上(前期高齢者及び後期高齢者)で,患者負担額2割負担および1割負担の患者さんの場合
0高外7→70 歳以上(前期高齢者及び後期高齢者)で,患者負担額3割負担の患者さんの場合
2 本外⇒本人の場合
4 六外⇒未就学者の場合
6 家外⇒家族の場合
8 高外一⇒高齢受給者、後期高齢者医療一般、低所得者の場合
0 高外7⇒高齢受給者、後期高齢者医療7割給付の場合
給付割合
給付割合は、保険が負担してくれる割合を指します。
患者さんが2割負担の場合、8にマルをします。
患者さんの負担2割⇒8にマル
患者さんの負担1割⇒9にマル
患者さんの負担なし⇒10にマル
患者さんの負担3割以上⇒マルを記入しない
保険者番号
保険者番号は、患者さんの保険証に記載されています。
この赤枠部分が保険者番号になります。
被保険者証等の記号番号
被保険者証等の記号番号は、この赤枠部分に記載されています。
発病又は負傷年月日
発病又は負傷年月日は、患者さんの傷病が起きた日時でよいです。
傷病名
医師からの同意書に書かれた傷病名を記入します。
療養を受けた者の氏名、続柄
施術を受けた患者さん本人の氏名を記入します。
続柄では、患者さん本人が世帯主の場合、「本人」と記入します。
別の場合は、「配偶者」または「家族」のどちらかを記入しましょう。
発症又は負傷の原因及びその経過
保険者によっては、求められるかもしれませんが、基本的に記入しなくてもよいです。
業務上・外、第三者行為の有無、1.業務上2.第三者行為である3.その他
労災や事故でなければ「3.その他」にマルをしましょう。
初療年月日
医師からの同意書が作られた日以降で、最初に施術をした日付を記入します。
施術期間、実日数
医師からの同意書をもらってから、初めて施術をした月単位で記入します。
注意点として、初療年月日に記入した日付が施術期間外とならないようにしましょう。
たとえば、
①医師の同意書を令和6年9月にもらい、同月9月10日に初めて施術を行ったとします。
この場合、施術期間に「令和6年9月10日~令和6年9月30日」と記入します。
注意点:初療年月日が令和6年9月10日の場合、「令和6年9月20日~令和6年9月30日」は施術期間外のためNG!
正しくは、「令和6年9月10日~令和6年9月30日」となる。
請 求 区 分(新規・継続)
初めて請求する場合は、「新規」、それ以外は「継続」で良いです。
傷病名、傷病名又は症状
【はり・きゅう】
【あんま・マッサージ】
医師の同意書に書かれた傷病名・症状をマルもしくは記入します。
転帰
転帰とは、状況を明記するものです。以下の内容によって、マルを付けます。
施術を続ける場合⇒「継続」
治癒の場合⇒「治癒」
施術を中止した場合⇒「中止」
保険医療機関を引き継いだ場合⇒「転医」
施術料、マッサージ、変形徒手矯正術、温罨法、電気光線器具
【はり・きゅう】
【あんま・マッサージ】
施術の内容ごとに記入する療養費は、各地域の厚生局にて案内がされています。
以下の画像は近畿厚生局にて案内された画像になります。
参考:近畿厚生局:あはき療養費の令和6年度料金改定の主な概要
施術内容ごとの記入例は以下をご覧ください。
【訪問鍼灸にて、初めての保険患者に対して、1カ月の間「はり・きゅう併用」を4回、通電を4回、電気温灸器を4回使用したとする。患者さん宅までの距離4km以内とする】
電療料の加算について、1回の施術にて、通電と電気温灸器を合わせて2回使ったとしても100円となります。
往療料
往療料は、患者さんが自力で通院が難しい場合に限り、認められます。
患者さん宅へ向かうためにかかる費用として、保険料があてられます。
令和6年の時点では、以下のとおりです
参考:あはき療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)について
4kmまでの場合、2,300円
4kmを超える場合、2,700円
患者さん宅までの距離の算定基準について、「事務所(施術所)」と「前の患者さん宅」のいずれか近い方を往療距離として算定されます。
そのため、下記のケースでは、往療費 2,300円となるので注意が必要です。
患者さんとの距離を測るときには、「mapli.net」を使うと便利です。
住所もしくはマップ上に直接タッチ選択をすることで、直線距離を出してくれます。
施術報告書交付料
同意書の継続の際に、医師に施術報告書を提出した場合に加算される料金です。
※令和6年時点では、施術報告書交付料 480円
施術報告書は、医師だけでなく保険者にも同じ報告書を送付する必要があります。
ただし、この報告書を提出することは必須ではなく、施術報告書を送らずに加算しないことも可能です。
合計
合計は、以下の赤枠部分を合わせた金額となります。
一部負担金(1割・2割・3割)
患者さんの自己負担額を記入し、該当する負担割合にマルをつけます。
たとえば、3割負担の患者さんの場合は「1割」にマルをし、合計金額の1割にあたる金額を記入します。
請求額
保険者に請求する金額を記入します。
合計から一部負担金額を差し引いた金額が請求額となります。【合計 – 一部負担金=請求額】
たとえば、患者さんが1割自己負担であれば、合計金額の9割にあたる金額が請求額となります。
施術日、通院○、往療◎
実際に施術をした日にあたる数字にマルをします。
往療料を請求する訪問であれば、「往療◎」にマルをします。
(往療料を請求しない)来院型であれば、「通院○」にマルをします。
たとえば、9月10日、13日、16日、20日、30日の5日間往診し、申請する場合、下のように記入する必要があります。
施術証明欄
赤枠部分の年月日には、保険施術をした最終日を記入します。
たとえば、令和6年9月28日が保険施術の最終日の場合、「令和6年9月28日」と月末日を記入します。
登録記号番号には、厚生局に施術所登録をしたときに受け取った番号を記入します。
「施術所」「施術管理者」には、施術所登録したときの施術所住所、氏名、電話番号を記入します。
登録記号番号は、各厚生局のHPにて一覧で確認できます。
手順として、以下のとおりです。
①各厚生局のHPをクリック
②自分の管轄の厚生局HPをクリックし、1番上にある検索窓にて「受領委任取扱い施術所一覧」と検索
③検索表示の1番トップの「はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の受領委任の取扱い施術所」をクリック
④施術登録表から、自分の院の登録番号を確認する
施術証明欄
保健所に登録している自分の施術所の区分を指します。
治療院(テナント)をかまえている場合は、「1.施術所所在地」
出張専門で登録している場合は、「2.出張専門施術者住所地」となります。
申請欄
施術証明欄と同様に、赤枠部分の年月日には、保険施術をした最終日を記入します。
たとえば、令和6年9月28日が保険施術の最終日の場合、「令和6年9月28日」と月末日を記入します。
申請先には、療養費支給申請書を送り保険請求する先を記入します。
保険証の「交付者名」または保険者証の「保険者番号並び保険者の名称及び印」にて記載されています。
たとえば、サラリーマンであれば全国健康保険協会、自営業や農家であれば国民健康保険などが挙げられます。
支払機関欄
療養費を振り込んでもらう自分の銀行口座情報を記入します。
レセプト代行業者を依頼している場合、レセプト代行業者が指定している口座情報を記入します。
同意記録
初回の場合、同意書を添付して送るため、同意記録欄は「空欄」のままでよいです。
2回目以降、つまり同意を継続した場合は書いた医師の氏名・住所を記入します。
※クリニック名などの施設名は不要です。
2回目以降の場合、添付している同意書はないため、同意を得ている旨を伝える意味で再同意をもらった年月日と傷病名を記入します。
要加療期間とは、同意の期間を指します。この部分では医師からの指示がない限り、「空欄」にしておきましょう。
本申請書に基づく給付金に関する受領を代理人に委任します
患者さん本人が世帯主であり、患者さん本人の保険の場合、患者さん本人の氏名・住所を記載します。
扶養に入っている場合など、世帯主が異なる場合は、世帯主の氏名と住所を記入してください
療養費支給申請書の提出方法
療養費支給申請書を送る際には、以下の書類も添付する必要があります。
<必要な提出書類一覧>
①療養費支給申請書(レセプト)
- 印鑑が作成に必要
- 療養費支給の振込先である銀行口座(番号)を記入する欄があります
- 施術所の登録記号番号が必要で、受領委任払いの申請により入手が必要
※受領委任払い申請の方法について、厚労省より案内されています(案内はこちら)
②同意書(原本)
- 初回または再同意のタイミングで必要
- 医師から記入してもらった同意書の原本のみ可(コピー不可)
③総括表
- 保険者に対して、いくら請求したいのか料金と件数をわかりやすくまとめたもの
- 施術報告書は厚労省HPにて入手可能
- 総括表(I):保険請求先である全ての保険者情報を載せるもの(ダウンロード)
- 総括表(Ⅱ):保険者ごとに請求額を記入し、それぞれを別々に作成するもの(ダウンロード)
- 総括表が不要な場合もある
④施術報告書
- 医師に保険の再同意を依頼するタイミングで必要な書類(保険の再同意は6ヶ月ごとに必要)
- 原本を医師に提出し、コピーを保険者に提出しなければならない
- 施術報告書は厚労省HPにて入手可能 (施術報告書の例)
⑤往復内訳表
- 往診料を請求する場合に限り必要
- どんな経路で、どの順番、どれぐらいの距離で往診したのかを報告するためのもの
- 往療内訳表は厚労省HPにて入手可能 (往療内訳表をダウンロード)
提出方法は、「郵送」または「保険者窓口に直接渡す」方法の2つとなります。
申請書の送り先住所は、患者さんの健康保険証に記載されている管轄先の住所となります。
郵送の場合、保険者に月初めの1~5日までの間に届くようにしましょう。
申請が通ったら、通知が届く
申請が通った場合、郵送で受理された通知が届きます。
少しでも間違いがあると返戻があり、もう一度、申請するように返却があります。
その場合、修正後、同じ提出方法で再度送りましょう。
まとめ
療養費支給申請書は、記入する項目が多いため、初めのうちは返されることがあるかもしれません。
ただ、書いていくうちにコツを掴むことができます。ここで解説した画像をもとに、基本的な書き方をマスターしましょう。