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【病院勤務者が語る】病院で鍼灸師として働くための方法は?

監修者:山中 一星
東海大学医学部付属病院 勤務/鍼灸師 

<略歴>
明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科卒業
明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科鍼灸学専攻(修士課程)修了
東海大学医学部付属病院診療技術部診療技術科
はり師・きゅう師。東海大学医学部付属病院鍼灸治療室

<所属学会>
日本伝統鍼灸学会、全日本鍼灸学会
日本緩和医療学会、日本東洋医学会

鍼灸師にとって、病院で働くことは魅力的な選択肢の一つです。​

特に、キャリアや収入、休日面を重視する方にとって、病院勤務のメリットは大きいと感じるでしょう。​

しかし、病院の求人は決して多くないのが現状です。​

また、病院で働くには、「何をすればいいのか」 「どんなスキル・経験が必要なのか」など、気になることが多いはずです。​

そこで本記事では、病院で働くために必要なことについて解説します。​

実際に病院で働いている鍼灸師の役立つ体験談もご紹介しますので、​

ぜひ参考にしてください。​

目次

病院で鍼灸師が​求められる理由​

病院では、薬や手術だけでは解決できない病気や痛みがあります。

特に、慢性的な痛みや長く続く病気は、西洋医学だけでは限界があることも少なくありません。

東海大学医学部付属病院では、こうした課題に対応するため、約30年前から東洋医学を取り入れています。

鍼灸は、西洋医学の治療では対応しきれない部分をカバーし、「隙間を埋める治療法」として役割を担っています。

大規模病院では治療が難しい病気にも直面することが多く、鍼灸は新たな治療アプローチとして利用されています。

なかでも、緩和ケアの現場で注目されており、「少しでも楽になれば」という思いから、医師や患者から鍼灸が選ばれています。

病院における​鍼灸師の仕事内容​

鍼灸師が病院でどんなお仕事をしているのか、わかりやすくご紹介します。

病院で働く鍼灸師ならではの仕事内容やスケジュールについてお伝えしていきます。

一日のスケジュールと業務内容​

【鍼灸師のタイムスケジュール例】

スクロールできます
08:30~09:00【事務作業・メール確認】
09:00~12:00【外来診療】
12:00~13:00【昼休み】
13:00~16:00【外来診療・
病棟訪問(入院患者の施術)】
16:00~16:30【片付け・記録整理】
16:30~17:00【カンファレンス】

施術ベッド2台で外来患者さんの受付をし、週5~6日間対応します。

外来では、1日あたり多い時で10名ほど診ています。

また、緩和ケアチームから依頼があると、病棟に移動して施術を行います。

月に1~2名ほどの依頼がありますが、退院まで毎日対応します。

鍼を使った施術だけでなく、会話を通じて精神的なケアを行うこともあります。

平日は外来や病棟で、鍼灸による緩和ケアを行い、土日は学会などに参加することもあります。

どんな症状の患者層を診る?

病院医療における鍼灸ー鍼灸師が病院で鍼灸を行うため|J-STEAGE」による統計調査によると、病院で働く鍼灸師は、主に神経内科や整形外科の患者さんを担当することが多いようです。

主に痛みを和らげたり、体の機能を改善することが中心になります。

実際に、東海大学医学部付属病院では、外来と病棟の2つの現場で、それぞれの患者さんに合わせた施術が行われています。

【外来患者】

外来では、主に腰痛や関節の痛みを抱える患者さんが多く来院します。

症状はさまざまで、以下のようなケースに対応しています。

主な外来患者

手足の軽い痛みや違和感
慢性的な腰痛や関節痛
長期間続く慢性痛による不調

来院される理由として、「病院で受ける安心感」や「院内の漢方外来(医師)からの紹介」が挙げられます。

また、個人の鍼灸院に対して「何をしているのか分からない」「衛生面が気になる」といった理由から希望される方もいます。

【病棟患者】

病棟では、がんに関連する痛みの緩和ケアを行います。

特に、以下のような症状に対応しています。

主な外来患者

がんによる慢性的な痛み
✔ 廃用症候群による痛み

ベッド上での生活による負担や痛み

体の負担を抑えるために、薬に頼らず鍼灸治療を取り入れ、患者さんが少しでも快適に過ごせるようサポートしています。

また、ベッド上での生活が続く患者さんに対しては、痛みの緩和だけでなく、心の負担を軽減するケアを行います。

医師・看護師・リハビリ職とのチーム医療について

チーム医療とは、医師・看護師・リハビリ職などが連携し、それぞれの専門分野で最善のケアを追求することだと考えています。

病院の治療方針や各専門分野の先生の専門性を尊重し、それぞれの業務を妨げることなく、東洋医学だからこそできることを考えながら、日々勝負しています。

例えば、病院内で筋緊張や圧迫骨折治療を受けても、なかなか症状が改善しないことがあります。

そんなときに、東洋医学のアプローチ(経絡治療など)を取り入れることで、補完的に回復をサポートすることができます。

一般的な個人の鍼灸院であれば、物理療法などを行うことが多いかと思います。

しかし、病院ではすでに他の専門職が行っているため、同じ物理療法を繰り返すのではなく、東洋医学ならではの施術をすることが大切です。

また、薬については、医師の判断を最優先し、「薬を減らす」といった口出しはしません。

そのうえで、東洋医学の観点からできること考え、患者さんの力になれるよう努めています

情報共有の面では、電子カルテを活用し、ツボ(例:足三里)やその解剖学的位置を共有しながら治療を進めています。

こうした連携を大切にし、各分野の強みを活かしながら、最大限のケアを提供できるよう心がけています。

病院勤務を始める前に知っておきたいこと​

病院は規模が大きく安定して働けるイメージがあり、憧れを持っている人もいるのではないでしょうか。

たしかに、方針として動かなければならない部分も多く、人によっては仕事がしづらいこともあるかもしれません。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、病院勤めに向いている人の特徴を紹介します。

病院勤務に向いている人の特徴​

医療として働きたい人

病院で行う鍼灸は、美容目的やリラクゼーションとは違い、医療行為としての意義が大きいです。

そのため、医療従事者としての責任を自覚し、チーム医療に貢献したい方には、病院勤務が向いています。

病院では、鍼灸治療は医師や看護師、心理士、検査技師といった他の医療従事者と連携しながら行われます。

このような環境で働くためには、医療的な知識をしっかりと身につけることが不可欠です。

また、病院の治療方針を理解し、医療チームの一員として柔軟に対応することが大切です。

病院の治療方針に基づき、東洋医学の治療方法をうまく調整し、施術をすることが求められます。

人付き合いが上手い人

病院では、医師や看護師、検査技師、心理士、受付スタッフなど、さまざまな職種と日々関わりながら働きます。

そのため、人付き合いが得意で、うまくコミュニケーションを取れることが求められます。

病院内で働く際は、情報共有がとても重要になります。

コミュニケーション不足はミスを招き、最悪の場合、患者さんの命にかかわることもあります。

病院はチームとして機能し、協力し合うことが求められます。

そのため、相手の意見をしっかり聞く「傾聴力」と、自分の意見を分かりやすく伝える「提案力」がいたる場面で求められます。

日々の業務に支障を起こさないために、コミュニケーション能力と人間関係を築く力は、とても重要な点となります。

謙虚な人

病院で鍼灸師として働くうえで、謙虚な姿勢は欠かせません。

医療現場では、さまざまな職種のスタッフと連携しながら、患者さんのケアに取り組みます。

そのため、自己中心的な行動を避け、チームの一員として協力する姿勢が求められます。

特に、指示やアドバイスを受けた際には、「しません」と断るのではなく、その意図を理解して対応することが重要です。

もちろん、プライドを持つことは大切ですが、高すぎるプライドはかえって業務の妨げになり、働き続けることは難しいでしょう。

こうしたことを背景に、謙虚に学び、前向きに取り組む姿勢は、病院で働く際、とても欠かせないポイントになります。

病院で働くメリットとデメリット

病院ならではのメリット・デメリットを紹介します。

メリット

安定した収入である

病院勤務では、安定した給与が支払われるため、収入面での不安を感じることはありません。

倒産する不安が少なく、安定した生活を送れることは大きなメリットでしょう。

また、病院では患者さんが自然に来院するため、集客のノルマを受けることがありません。

鍼灸師として施術に集中できる環境が整っており、施術に専念できる点も大きなメリットと言えるでしょう。

医療現場を知ることができる

病院内での勤務は、医療の現場に直接触れることができます。

患者のケアや治療方法を学びながら、実践的な経験を積めることができる点が大きな魅力です。

さらに、医師と接する機会があるため、医療現場の内情を知ることができます。

医療現場で求められるスキルを知れるだけでなく、学べる環境が整っているので、意欲がある人はどんどんスキルアップしていけます。

病院での経験に勝るもの数少ないでしょう。

休みがとれる

病院では、比較的決まった休みがあるため、リフレッシュできる環境が整っています。

休暇も計画的に取りやすく、連休や長期休暇を楽しむことができるでしょう。

また、診療時間は朝から夕方までで、夜遅くまで働くことはないため、仕事とプライベートのオンとオフをしっかりつけて過ごせる点もメリットです。

デメリット

鍼灸治療以外の業務がある

病院で働く場合、鍼灸治療以外にも事務作業や書類作成など、病院ならではの業務があります。

また、医療関係の委員会や防災訓練、学会など、さまざまな活動に参加しなければいけません。

そのため業務以外の仕事もあるため、スケジュール管理が求められる場面もあるので注意が必要です。

その準備に時間がかかることもあるため、業務外の仕事が増えることがあります。

これらをうまくこなすためには、スケジュール管理が重要です。

組織としての制約がある

病院では、組織内でのルールや手続きが必要となるため、個人の判断で行動することはできません。

たとえば、試してみたい施術があっても、必ず医師への依頼状が必要となります。

治療方針が決まっている中で、他の医療スタッフとの調整や、上長や他部署の承認が必要です。

そのため、やりたいことを実現するには、時間と提案力が求められます。

施設としての制約がある

病院では、火を使用することが困難なケースが多いです。

お灸などの伝統的な道具を使う施術ができないこともあります。

いまでは、電子温灸器といった医療機器があるものの、お灸による効果を完全に再現することは難しいのが現実です。

そのため、鍼灸ならではの施術効果を十分に活かせないことに、もどかしさを感じる場面に直面することもあります。

給料・休日・福利厚生の実情​

病院勤務の給与モデル​

鍼灸を取り入れている病院やクリニックが出している、正社員の求人は多少あります。

正社員の月給は 20万円~35万円前後 で、年2回のボーナス が支給されるのが多いです。

そのため、年収は300万円~400万円後半 の範囲となるでしょう。

また、勤務先の規模や地域、経験年数によっても給与に差が出るため、しっかり確認することが大切です。

参照:【2025年3月最新】鍼灸師を募集している診療所の求人・転職情報 | ジョブメドレー

参照:整形外科 鍼灸師の転職・求人情報 – 東京都|求人ボックス

働き方と休日​

病院の勤務は、診療時間に合わせたシフト制です。

基本的には、朝8~9時に勤務開始し、午後5~7時の間で退勤することがほとんどです。

休日は、日曜日が定休で、土曜日は必要に応じて出勤します。

例えば、東海大学医学部付属病院では、日曜日と第2週・第4週の土曜日と休みであり、第1週・第3週・第5週の土曜日は出勤となるシフトです。

年末年始やお盆の休みは基本的にはないものの、代わりに夏休みがきちんと設けられており、リフレッシュすることができます。

また、有休休暇を取りやすく、計画的に休めるため、仕事とプライベートのバランスを取りやすいです。

福利厚生​​

病院では、スタッフと同じく、社会保険などの基本的な福利厚生が完備されています。

他にも、医療従事者ならではの福利厚生も存在します。

あくまで一例ですが、東海大学医学部付属病院では、、職員寮が完備されており、住まいに関して手厚いサポートがあります。

また、スキルアップを支援するために、書籍の購入費用を一部負担してくれる制度があり、高額になりがちな専門書も購入しやすくサポートしてくれます。

さらに、学会に参加すると、手当が支給されるなど、成長をサポートする福利厚生が充実しています。

病院で働くために必要なスキル・資格・経験はある?

病院で働くためには、東洋医学の知識はもちろん、西洋医学への理解が求められます。

西洋医学の治療方針に基づいた診療を行うため、西洋医学へのリスペクトと、それを支える東洋医学のスキル&スキル向上の意欲が大切です。

学歴面では、大学卒以上が好まれる傾向にあり、特に修士や博士号を取得していると有利です。

これは、学会発表や論文作成、事務作業など、病院での仕事にはこうした学術的な業務があるためです。

また、医療組織の一員として働くため、文書作成能力やコミュニケーション能力も欠かせません。

さらに、日常的にパソコンを使用するため、パワーポイントやExcelを使った資料作成やデータ管理ができることも求められます。

病院の求人を見つける方法(転職サイト、知人、直問合わせ)

基本的に病院から求人情報が出ることはありません。

病院の求人が少ない理由は、そもそも鍼灸を取り入れている病院が少ないためです。
平成24年の「病院医療における鍼灸ー鍼灸師が病院で鍼灸を行うために」を参考にすると、鍼灸を取り入れている病院は次のとおりでした。

  • 全国8,168病院のうち304病院(4%)
  • 304病院のうち院内で鍼灸治療を行っているのは107病院

しかし、病院の求人を見つけるには以下の方法があります。

  • 大学の先生に聞いてみる
  • 学会を通じて求人情報を得る

求人が出ない以上、自分の足を使って人から紹介してもらうことが重要になります。

まずは大学の教授に相談してみるとよいでしょう。

教授は医療業界とのコネクションを持っていることが多く、求人が出た際に紹介してもらえることがあります。

また、緩和医療学会など、医師が参加する学会への参加をおすすめします。

参加している医師の中には、鍼灸師を雇いたいと考える方もいます。

こうした学会に足を運んで探すことで、非公開の求人情報や、他の人には知らせていない求人情報を教えてもらえるチャンスを見つけやすくなります。

コネクションを大切にし、自らの足で探すことが、効率的に見つける1番の方法かもしれません。

【体験談】病院で働く鍼灸師のリアル

りんちゃん

今回、実際に病院で働いている鍼灸師にインタビューしました!

りんちゃん

東海大学医学部付属病院で勤務されている山中先生にお越し頂きました!

山中先生

よろしくお願いします!

りんちゃん

よろしくお願いします!

りんちゃん

さまざまな体験エピソードを教えてください!

山中先生

わかりました!

就職活動で意識したこと・工夫したこと

りんちゃん

就職活動では、どのような対策をしたのでしょうか?

山中先生

病院への就職活動で意識したことは、一般常識試験やSPIの対策でした

山中先生

病院によっては一般企業と同じように、基本的な学力を測るテストを設けることがあります。
そのため、計算問題や読解問題に慣れることが重要です!

りんちゃん

そんな試験があることを知らなかったです!

山中先生

そうなんですよ

山中先生

書店の問題集を繰り返し解き、試験対策をしっかり行うことが大切です!

治療院から病院に転職して感じたこと

りんちゃん

病院に勤める前は、どのような活動をされていましたか?

山中先生

病院に勤める以前は、京都にある鍼灸院と滋賀の診療所にて働いていましたね

山中先生

そこから人からの紹介をきっかけに、東海大学医学部付属病院に転職しました

りんちゃん

鍼灸を長年取り入れている病院ですね!

山中先生

私も、そこで働いている医療従事者も鍼灸に対する理解があるだろうと考えていました

山中先生

しかし、実際に現場に入ると、医師や看護師の多くが鍼灸についてほとんど知らないことに気づきました

りんちゃん

え!鍼灸について、知っている方ばかりではなかったんですね…

山中先生

そうだったんですよ

山中先生

そのため、鍼灸ついて、説明する機会も多かったですね

病院勤務ならではのやりがいとキャリア展望

りんちゃん

病院で働くなかでの、やりがいを教えてください!

山中先生

患者さんの症状が改善し、「楽になった」と実感してもらえたとき、やりがいを感じます!

山中先生

とくに病院では、西洋医学では対応が難しい疾患や症状を抱えた患者さんを多く抱えています

山中先生

そんななかで、
「鍼灸だからこそできることがある」と感じながら施術ができることに、この仕事の大きな意味を感じています!

りんちゃん

素晴らしいです!

りんちゃん

今後、どのような活動をしていきたいですか?

山中先生

現在、鍼灸は多くの医療現場で十分に活かされているとは言えません

山中先生

いわゆる「スキマ産業」的なポジションですが、鍼灸ならではのできることがたくさんあると考えています。

山中先生

鍼灸がもっと身近な存在になれるよう、その可能性を広げていきたいと思っています

りんちゃん

鍼灸には、多くの可能性がありますよね

りんちゃん

特に、どのような分野でお考えですか?

山中先生

特に、緩和医療の分野では
鍼灸が患者さんの苦痛を和らげる大きな力になれると考えています

山中先生

今後は、この分野で鍼灸がもっと普及されるよう
活動していきたいと思っています!

りんちゃん

鍼灸の普及に向けた取り組み、応援しています!

まとめ

病院で働く鍼灸師は、病院の治療方針に従い、東洋医学として最大限できる施術を行います。

病院で働くメリットとして、実務経験を積めること、安定した収入や休日が挙げられます。

ただし、鍼灸業務以外にも、学会参加や書類作成などのPC作業が求められるため、PCスキルが必要です。

また、他の医療従事者と連携して治療を進めるため、自分の治療法を自由に試すことは難しい場合がほとんどです。

求人については、数が少ないため、学会に参加したり、教授に求人情報を尋ねるなどの積極的なアプローチが重要です。

今後、病院で働きたいと考えた際、この記事で紹介した内容を参考にしてみてください。

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