鍼灸院経営には、さまざまな税金がかかります。なかでも「消費税」について、「納税する必要があるのか?」
「納税額の求め方がわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、税金の仕組みは複雑で、難しく感じるものです。
そこで本記事では、鍼灸院の消費税について、基本知識から計算の求め方までわかりやすく解説します。
鍼灸院は消費税を納税すべき?納税のルールを解説!

鍼灸院で消費税の納税が必要/不要なケース
消費税は、課税売上が1,000万円を超えると「法人」「個人事業主」に関係なく、2年後に納税義務が発生します。
また、たとえ、課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(前年6ヶ月間)の課税売上高または給与等が1,000万円超えれば納税しなければなりません。
ここでは、消費税を納税すべきケースと納税が不要なケースを紹介します。
消費税を支払う必要があるケース | 消費税を支払わなくてよいケース |
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・実費診療のみで売上が1,000万円を超える場合 ・実費診療と保険診療の売上があるなかで、実費売上分が1,000万円を超える場合 ・物品販売による収入を含めた実費売上1,000万円を超える場合 ・特定期間(前年6ヶ月)の課税売上高及び給与等の金額が1,000万円を超えた場合 | ・売上が1,000万円以下の場合 ・実費診療と保険診療の売上があるなかで、 実費売上分が1,000万円を下回る場合 ・売上1,000万円(実費)で、 課税事業者として申請した年から2年間 |
売上が1,000万円以下の場合、消費税を支払う必要がありません。
この場合、患者さんから消費税を含めた売上をそのままもらうことができます。
また、保険診療(労災保険を含む)による収入は非課税となります。
したがって、保険診療だけの収入が1,000万円を超えていても、消費税を支払う必要はありません。
【課税事業者とは】
消費税の課税対象となる売上1,000万円(実費)を超えた場合、税務署に課税事業者の申請することができます。
課税事業者の申請をすると、申請後2年間は消費税の納税が免除されます。
消費税を無申告したら?期限すぎたときの罰則について
消費税を滞納した場合、以下の順にペナルティを課されます。
滞納時のペナルティ
- 延滞税が発生する
- 税務署からの督促が届く
- 財産調査が始まる
- 差押予告通知書が届く
- 差押えが実行される
消費税を納税していないと、延滞税が発生します。
延滞税は、納税期限の翌日を起算日として、起算日~完納日までの期間に対して計算されます。
税率は2カ月ごとに増加し、最大で年利14.6%まで膨らみます。
消費税の計算方法
消費税を計算する方法には、主に2つの方法があります。一般課税と簡易課税です。
基本的なルールから計算方法まで解説します。
計算方法
①一般課税(原則課税)
一般課税では、売上に含まれる消費税から、経費にかかった消費税を引いた差額を納税することになります。
この計算では、インボイス(適格請求書)が必要となります。
インボイスがないと、経費分の消費税を引くことができません。
【例】実費と物販による売上が2,000万円の場合

- 売上:2,000万円(消費税込み)
- 経費(仕入れ等):1,000万円(消費税込み)
この場合、納税する消費税額は、売上の消費税から経費にかかる消費税を差し引いて計算します。
<計算式>
- 売上に含まれている消費税:2,000万円 のうち 200万円が消費税だったとする
- 経費にかかった消費税:1,000万円 のうち 180万円が消費税額だったとする
- 差額(納税額):200万円 – 180万円 = 20万円
このため、納税する消費税額は 20万円 となります。
つまり、売上2,000万円に対して経費1,000万円がある場合、消費税として納める額は 20万円 です。
②簡易課税
簡易課税は、鍼灸院のみならず、よく使われる計算方法となります。
一般課税(原則課税)とは違い、簡単な計算であることが特徴です。
課税売上の金額に対して、決められた税率を掛けて計算します。
たとえば、鍼灸院の場合、税の法律上、第5種のサービス業に分類され、50%の税率となります。
【例】実費と物販による売上が2,000万円の場合

- 売上:2,000万円(消費税込み)
- 経費(仕入れ等):1,000万円(消費税込み)
<計算式>
- 売上に含まれている消費税:2,000万円 のうち 200万円が消費税だったとする
- 簡易課税における「鍼灸院のみなし仕入れ率は50%」である税法を参考にする
- 差額(納税額):200万円×みなし仕入率50% = 100万円
この場合、納税する消費税額は 100万円 となります。
簡易課税では、売上に含まれる消費税に「みなし仕入れ率」をかけて計算し、その金額を納めます。
回数券の計上は、どうすればよい?
回数券の売上計上は、原則として使われた時点で行われます。
つまり、患者さんが回数券を使ったタイミングで、使われた回数券分を売上として計上することになります。
しかし、この方法では、回数券が使われるたびに売上を記録する必要があり、管理がとても大変です。
そのため、実際の現場では、管理の負担を減らすために、回数券を売った時点で、まとめて売上を計上する方法を選ぶ方が多いようです。
この方法では、回数券の使用状況を一度にまとめて計上できるため、事務作業が楽になります。
申告方法解説!ツールや専門家への相談も
鍼灸院の確定申告に役立つツールなどを紹介します。
確定申告におすすめのソフト
鍼灸院の確定申告に役立つツールとして、以下の3つがあります。
弥生の青色申告 | freee会計 | マネーフォワード確定申告 |
セルフプラン 8,000円/年額 | スターター 年11,760円 | パーソナル 年16,896円 |
クラウド申告ソフトシェアNo1 初年度1年間無料! | 会計初心者でも、とにかく簡単 スマホで領収証と申請ができる | 経営状況のデータ分析ができる スマホで領収証と申請ができる |
難しければ税務署・税理士に相談すべし
確定申告は、初めての方にとって難しく感じることが多いものです。
もし「どの計算方法を選べばいいのか」「消費税の申告をどうすればいいのか」など、疑問や不安がある場合は、税務署や税理士に相談しましょう。
税務署に相談する場合
税務署では、基本的な税金の仕組みや申告の流れについて無料で相談できます。
電話や窓口対応のほか、確定申告の時期には特設会場も開設されます。
ただし、税務署の職員は一般的なルールの説明が中心で、具体的な節税アドバイスまでは対応してくれません。
税理士に相談する場合
税理士に相談すれば、自分の状況に合わせたアドバイスを受けることができます。
例えば、「どの課税方式が有利か」「どんな経費を計上できるのか」といった細かい相談が可能です。
費用はかかりますが、間違った申告を防いだり、節税の方法を知ることができるため、結果的に負担を減らせることもあります。
また、税理士の選び方でも、注意が必要です。
すべての税理士が、どの業種にも詳しいわけではありません。
税理士には得意・不得意な分野があり、業種ごとに適した税務知識が求められます。
そのため、鍼灸院などの実績が豊富な税理士を選ぶことが大切です。
例えば、「税理士法人しんぎ」では、鍼灸院などの治療院を得意とし、確かな実績があります。
もし、税金の計算や申告に不安があるなら、一度に相談してみるのがおすすめです。

まとめ
鍼灸院の消費税は、実費または物販を含めた売上が1,000万円を超えると支払いが必要になります。
もし、申告を忘れると延滞税が発生することもあるため、確定申告はしっかりしましょう。
確定申告や節税対策が難しい場合は、鍼灸院に詳しい税理士に相談することをおすすめします。