「通電機器は持っているけど、正直あまり使いこなせていない」「電気鍼を取り入れてみたいけど、いまいちわからない」——と悩む鍼灸師は少なくありません。
鍼通電に興味があっても、「電気の仕組み」を聞くだけで、なんだか難しそうと感じてしまうかもしれません。
この記事では、低周波鍼通電療法の基本的な仕組みから、症状別の使い分け、注意点までをわかりやすく解説します。
低周波鍼通電療法とは?

低周波鍼通電療法は、低周波の電気刺激を皮膚に貼るパッドではなく、鍼(はり)を通じて体に流す方法です。
鍼を使って、0.1〜1000Hzの低周波の電流を流し、筋肉や神経を直接刺激します。
Hz(ヘルツ)とは、1秒間あたりの電気刺激を表しています。
例)1Hz:1秒間に1回の電気刺激、1,000Hz:1秒間に1,000回の電気刺激
| 低周波 | 0.1Hz~1,000Hz |
| 中周波 | 1,000Hz~10,000Hz |
| 高周波 | 10,000Hz以上 |
なぜ今、電気鍼(低周波鍼通電療法)を使う鍼灸師が多いのか?
増加の理由-1024x538.png)
電気鍼(低周波鍼通電療法)を使う鍼灸師は多い理由として、治療効率と効果の高さにあります。
実際に、電気鍼には次のようなメリットがあります。
深部の筋・神経に、ピンポイントで電気刺激が届く
パッドや手技だけでは届かない“深層部”に、ダイレクトにアプローチできるのが電気鍼のメリットです。
たとえば、肩甲下筋や坐骨神経といった深い部位に対して、鍼を通じて電気刺激を送ることで、ピンポイントに作用させることができます。
深部にダイレクトなアプローチができることが、電気鍼が選ばれている理由のひとつです。
治療時間の短縮につながる
一般的な鍼でも、筋肉や神経に直接アプローチできるため、コリや痛みの緩和、血流の促進など、症状の改善を早める期待ができます。
そこに鍼通電を組み合わせることで、電気刺激の作用がプラスされ、治療効果をより一段と高めることができます。
最近では、通電療法の効果を示すエビデンスが増えており、鍼通電は臨床現場でスタンダードな選択肢になっています。
施術の再現性が高い
通電療法では、設定したHz(刺激量)、パルス幅(刺激の長さ)によって、効果が変わります。
そのため、「狙った部位に、設定どおりの刺激をしっかり届けられるか」が重要です。
鍼通電はパッドと違い、皮膚の抵抗に左右されにくいため、電気刺激を深部まで安定して送ることができます。
鍼通電であれば、意図した電気刺激を送れるため、再現性の高く、エビデンスベースの施術ができるメリットがあります。
周波数ごとの効果とメカニズム

※画像は一例です。
低周波鍼通電療法では、周波数によって効果が変わるため、目的に応じた使い分けが重要です。
【通電における効果】
- 鎮痛作用
- 筋緊張の緩和
- 血流改善
- 消炎作用
- しびれや麻痺の緩和
- 組織修復
1~10Hz
低頻度(1〜10Hz)の電気刺激では、1秒間に1〜10回の刺激が送られます。
この刺激により、筋肉のポンプ作用が高まり、血流が促進されることで発痛物質の排出が期待できます。
また、下降性疼痛抑制系が働き、エンドルフィンなどの鎮痛物質の分泌を促す作用もあります。
【メカニズム】※諸説あります。
- 周波数:2Hz(1〜10Hz)
- 刺激の強さ:筋が軽く動く程度
- 刺激時間:5分以上
- 作用メカニズム:Ia・Ib抑制(末梢神経経路)を介して筋緊張を抑制
- 対象:過緊張・拘縮がある筋肉
- 周波数:2Hz(1〜10Hz)
- 刺激の強さ:刺激を感じる程度
- 刺激時間:10分以上
- 作用メカニズム:筋肉による血管のポンプ作用向上、ポリモーダル受容器の興奮による血流促進
- 対象:血流がよくない部位
- 周波数:4Hz(1〜10Hz)
- 刺激の強さ:刺激を感じる程度
- 刺激時間:15分以上
- 作用メカニズム:βエンドルフィンの促進(下降性疼痛抑制系)
- 対象:-
- 周波数:2Hz(1〜5Hz)、5Hz(10~30Hz)
- 刺激の強さ:刺激を感じる程度
- 刺激時間:15分以上
- 作用メカニズム:エンケファリンの促進(下降性疼痛抑制系)
- 対象:-
50Hz~100Hz以上
50〜100Hzの電気刺激では、1秒間に50〜100回の刺激が送られます。
連続的な刺激によって筋肉が持続的に収縮されます。
ほかにも、ゲートコントロール説などといった鎮痛作用が期待できます。
【メカニズム】※諸説あります。
- 周波数:100Hz
- 刺激の強さ:耐えられる範囲内
- 刺激時間:5分以上
- 作用メカニズム:ゲートコントロールによる鎮痛
- 対象:障害分節
- 周波数:100Hz
- 刺激の強さ:刺激を感じる程度
- 刺激時間:15分以上
- 作用メカニズム:ダイノルフィンの促進(下降性疼痛抑制系)
- 対象:-
波形ごとの違い

通電を行う際には、「波形」と呼ばれる電気刺激の回数やリズムが重要になります。
「トントン」とリズムよく感じるものや、「ジーッ」と持続するものなど、波形によって刺激の伝わり方が変わり、効果にも違いが出るといわれています。
コンスタント

一定のリズムで刺激(Hz)をします。神経を興奮させ、疼痛を抑制させます。
また、一定のリズムで筋肉に刺激を与えることで、筋ポンプ作用が働き、血流が促進されます。
スウィープ
刺激のリズムが徐々に速くなり、またゆっくりに戻る——この変化を繰り返すのがスウィープモードの特徴です。
刺激の慣れを防ぐほか、鎮痛物質の生産・放出を誘発させることができます。

バースト
間をあけながら刺激を与えることで、ふだん反応しにくい神経にもしっかり刺激を届けることができます。
体が慣れてしまうのを防ぎつつ、神経の反応をしっかり引き出すことができます。

モジュレーション

筋肉の収縮と弛緩をくり返すことで、筋収縮改善を促します。
筋肉トレーニングに使われるEMS(電気刺激)と同じような刺激を再現できる波形です。
鍼通電の禁忌|鍼通電を避けるべき人とは

鍼通電では、ペースメーカー装着者や、心疾患・がんのある方にはリスクがあるため禁忌とされています。
以下は、添付文書に記載されている鍼通電の禁忌例です。
【禁忌・禁止】
- 次のような患者及び部位へは使用しないでください。
- ペースメーカなどの特定の植込み形の電子装置を装着している患者
- 阻血組織
- 中程度以上の浮腫のある部位
- 知覚障害のある部位
- 原因不明の急性(疼痛性)疾患の患者
- 心臓に障害がある患者
- 出血性素因の高い患者
- 悪性腫瘍のある患者
- 妊産婦
- 皮膚の損傷、炎症部位
- 有熱性疾患患者
- 伝染性疾患患者
- 静脈怒張の皮膚表面(静脈が浮き出る状態)
- 体内に金属・プラスチック(人工骨頭、埋没くぎなど)を埋め込んである部位
- 血栓症、静脈血栓症、静脈瘤などの血管障害の恐れのある患者
- 頚動脈洞上
- その他、医師が不適当と認めた患者
【併用禁忌】 - 心電計などの装着型医用電気機器との併用はしないでください。
- 他の機器との併用はしないでください。
- 外科用機器との同時接続は避けてください。
【さらに知りたい方に】おすすめの通電セミナー

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臨床的な使い方も解説しているため、初心者の方にはおすすめしたいセミナーとなります。
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まとめ
低周波鍼通電療法は、パッドよりも深い筋肉や神経に、意図した電子刺激を届けられるメリットがあります。
狙った効果も引き出しやすく、治療の再現性が高いことが特徴といわれています。
鍼通電をしっかり学べば、これまで以上に治療効果を引き出せるようになるはずです。
まずはセミナーなどに参加し、基礎から学んでいきましょう。



















