鍼灸院を開業したいと考えたとき、一番の悩みは資金の確保ではないでしょうか。
鍼灸院の開業資金は200万~800万円程度が目安といわれていますが、この金額をすべて自己資金でまかなうのは大変です。
そこで活用したいのが、国や自治体が提供する「助成金」や「補助金」です。
これらを上手に利用すれば、開業に必要な初期費用の負担を大きく減らすことができます。
本記事では、鍼灸院の開業に活用できる助成金・補助金の紹介や制度を受ける際の注意点について解説します。
鍼灸院の開業資金はどのくらい?

鍼灸院を開業するには、200~800万円ほどの初期費用が必要といわれています。
この費用は、以下のような内訳で構成されます。
▼開業にかかる初期費用の内訳
- テナント費用
- 施工費(内装・外装など)
- 設備、備品などの購入費用
- 広告費(ホームページやチラシ作成)
- 6ヶ月~1年分の運転資金(賃料、水道光熱費、消耗品費、通信料など)
開業直後は売上が安定しない場合も多いため、初めはコストを抑え、運転資金を十分に確保することが大切です。
助成金や補助金を活用することで資金面での負担が軽くなる可能性があります。

助成金と補助金の違い

助成金や補助金は、融資と違い、基本的に返済の必要がない制度です。
助成金と補助金に意味の違いはほとんどありませんが、目的や給付条件に違いがあります。
助成金 | 補助金 | |
管轄 | 厚生労働省 | 経済産業省・中小企業庁 |
目的 | 雇用や労働環境の改善 | 新規事業や地域振興を促進 |
給付条件 | 一定の条件を満たせばほぼ必ず受給可能 | 申請内容が審査され採択が必要 |
金額 | 少額がほどんど | 少額から数千万円以上のものまで |
募集期間 | 通年募集が多い | 期間限定(数週間~1か月程度) |
難易度 | 易しい | 難しい(高倍率で、優秀な提案内容が求められる) |
助成金や補助金を選ぶ際は、目的や募集期間を確認することが大切です。
鍼灸院の開業に活用できる助成金・補助金5選

助成金・補助金の違いがわかったところで、ここでは、鍼灸院の開業に活用できる助成金・補助金を以下5つ紹介します。
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業再建築補助金
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 創業支援等事業者補助金
1.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化を支援する補助金制度です。
項目 | 詳細 |
補助対象例 | ・店舗改装費 ・広告宣伝費(チラシ・パンフレット制作、ウェブサイト作成) |
対象条件 | 従業員5人以下の鍼灸院 |
補助率 | 必要経費の3分の2 |
上限額 | 50万円~200万円(条件により異なる) |
鍼灸院の開業直後でも利用可能です。
ただし、商工会議所の支援を受ける必要があり、申請時には経営計画の作成が求められます。
募集は定期的に行われるため、最新情報をチェックして活用しましょう。
公式サイト:小規模事業者持続化補助金
2.事業再建築補助金
事業再構築補助金は、鍼灸院を含む中小企業が新たな事業展開や業態転換に挑戦する際に活用できる補助金です。
項目 | 詳細 |
補助対象例 | ・新分野展開(美容鍼やスポーツ鍼灸など新たなメニューの導入) ・業態転換(出張専門鍼灸サービスへの変更) ・規模の拡大(施術スペースの増設や機材の導入) |
補助率 | 必要経費の3分の2 |
補助金額 | 100万円~1,500万円(条件により異なる) |
販路拡大や新サービス導入を考える鍼灸院にとって、事業再構築補助金は力強い支援になります。
応募には具体的な計画書が必要ですので、事前準備が大切です。
公式サイト:事業再建築補助金
3.IT導入補助金
IT導入補助金は、鍼灸院などの中小企業がITツールを導入する際に活用できる補助金制度です。
項目 | 詳細 |
補助対象例 | 電子カルテや予約システム、会計ソフト、パソコン、タブレットの導入など |
補助率 | 費用の2分の1~4分の3 |
上限額 | ・通常枠(A類型):150万円未満・通常枠(B類型):450万円以下・セキュリティ対策枠:100万円 |
申請にはIT導入支援事業者と連携が必要です。
計画的に準備し、締切に間に合うよう申請しましょう。
公式サイト:IT導入補助金
4.ものづくり補助金
ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や生産プロセスの改善を目指す設備投資を支援する補助金です。
鍼灸院でも、新しい施術メニューの開発や施術の効率化を図る際に役立つ可能性があります。
項目 | 詳細 |
補助対象例 | 設備導入費、システム構築費、外注費 |
補助率 | ・中小企業(一般型・グローバル展開型)…2分の1 ・小規模事業者…3分の2 |
上限額 | 最大3,000万円(事業の規模により異なる) |
申請から結果通知まで1か月程度かかるため、申請の際はスケジュールに余裕を持って計画的に進めましょう。
公式サイト:ものづくり補助金
5.創業支援等事業者補助金
創業支援等事業者補助金は、対象地域でビジネスを始める際に必要な資金を一部支援する制度です。
鍼灸院を開業予定の方にとって、経費の負担を軽減できる助けとなるでしょう。
項目 | 詳細 |
対象者 | 市区町村が認めた地域で新たに鍼灸院を開業する事業者 |
補助対象例 | ・設備費(鍼灸用具など) ・人件費(スタッフの給与) ・その他(開業に必要な経費) |
補助率 | 経費の最大3分の2 |
上限額 | 最大1,000万円(創業支援の規模による) |
なお、地域創業事業支援補助金は、名称や制度内容が変更される可能性があります。
例えば、以前は「地域創造的起業補助金」という名称でしたが令和元年度予算で名称が変更されました。
今後も変更されることがあるため、最新の公募情報を確認してください。
地域限定の助成金・補助金

鍼灸院の開業をサポートしてくれる助成金や補助金は、地域ごとに設けられている場合もあります。
興味がある方は、お住まいの地域や開業予定地に適した制度を調べてみてください。
ここでは、地域限定補助金の一例を紹介します。
【東京都】若手・女性リーダー応援プログラム助成事業
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業は、東京都内の商店街で開業を目指す女性や39歳以下の若手男性を対象にした助成制度です。
鍼灸院の開業も対象になり、経費負担の軽減に活用できます。
項目 | 詳細 |
対象者 | 都内商店街で鍼灸院を開業予定の方(女性、または年度末時点で39歳以下の男性) |
補助対象例 | ・店舗新装、改装工事費 ・設備、備品購入費 ・店舗賃借料 |
補助率 | 経費の4分の3 |
上限額 | 最大730万円 |
女性は年齢制限がないため、都内の商店街で開業を考えている方はぜひチェックしてみてください。
公式サイト:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業
助成金・補助金を受ける際の注意点

助成金や補助金は、鍼灸院の開業をサポートしてくれる便利な制度です。
しかし、申請には条件やルールがあり、注意しなければいけないポイントもあります。
ここでは、申し込み時の注意点を3つ説明します。
- 申し込み条件と締め切りを確認する
- 必要書類を確認する
- 決められた使い方を守る
申し込み条件と締め切りを確認する
助成金や補助金には、対象者や事業内容に応じた条件があります。
例えば、「女性」「39歳以下」などの年齢条件や、「市区町村が認めた地域」での開業が必要な場合もあります。
また、申請の締め切り期限が設定されているため、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
申請が遅れると制度が受けられなくなります。最新の情報を公式ページで必ず確認してください。
必要書類を確認する
申請には、事業計画書や見積書、本人確認書類などが必要です。
さらに、助成金の交付後には「実績報告書」や「事後報告書」を提出する義務があります。
これらの書類を期限内に提出しないと、助成金や補助金の返還を求められる場合もあります。
そのため、あらかじめ必要書類をリスト化し、漏れがないように準備しましょう。
決められた使い方を守る
助成金や補助金は、指定された用途以外に使うと違反になります。
例えば、鍼灸院の開業費用として交付された助成金を、個人的な目的で使うことはできません。
また、不正使用が発覚すると、全額返金だけでなく、罰則を受ける可能性もあります。
助成金や補助金のルールを守り、適切に活用しましょう。
まとめ
助成金や補助金は、鍼灸院の開業を目指す際、大きな助けになります。
ただし、申請条件や必要書類、期限をしっかり確認し、準備を整えることが大切です。
不適切な利用や不備があると、返金を求められる場合もあるため、事前準備を怠らず、最新情報を確認しましょう。
開業準備中の方は、本記事を参考に活用してみてはいかがでしょうか。