これから鍼灸院を独立開業しようと考えていると、「施術管理者」の届け出が必要と耳にするかもしれません。
しかし、「施術管理者ってなんだろう?」「なるためには何をすればいいの?」「申込方法がわからない」といったように、よくわからない部分もあるかと思います。
そこでこの記事では、施術管理者の基本や取得の流れ、申込方法までわかりやすく解説します。スムーズに準備を進められるよう、ぜひ参考にしてください。
鍼灸・マッサージの施術管理者とは

鍼灸・マッサージにおける施術管理者とは、療養費支給申請における受領委任業務を正しく管理する人のことです。
以前は、はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の資格があれば、そのまま施術管理者になることができました。
しかし現在では、療養費の不正請求を防ぎ、施術の質を保つために、施術管理者研修の受講が義務化されています。
参考:290327【あはき】報告書(あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費の見直しについて)
参考:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費に関する受領委任の取扱いについて
鍼灸・マッサージの施術管理者のメリットとは

施術管理者になると、保険施術における「療養費の受領委任」を取り扱うことができます。
これは、患者さんにとっても施術院にとっても、大きなメリットとなります。
保険施術で受領委任を利用できない場合、患者さんは施術代を全額(10割分)を支払い、その後、患者自身が保険で還付される分を請求しなければなりません。
たとえば、
- 週1回5000円の施術を月4回受けると2万円
- 週2回5000円の施術を月4回受けると4万円
この金額をその場で払う必要があります。
この「一時的な高額負担」が、患者さんにとって大きなハードルになるのです。
一方、施術管理者がいると、施術後の会計で、患者さんは自己負担の分だけ支払えば済むようになります。
これにより、金銭的な負担がなくなり、患者さんが通院しやすくなるのです。
患者さんが通いやすくなることで、保険適用施術の患者数が増え、売上の安定につながります。
そのため、施術管理者の登録は、鍼灸院を開業する際には欠かせないものといえるでしょう。
施術管理者になるための要件とは?

施術管理者になるには、2つの要件を満たす必要があります。
実務経験が必要
はり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師として実務経験が1年間必要になります。
この実務経験として認められるのは、保健所に施術者として届出がされている期間に限られています。
ただし、雇用形態や勤務時間については特に制限はありません。
また、実務経験を証明する際には、「実務経験期間証明書」の提出が求められます。
施術所が受領委任を取り扱っていない場合には、「施術所開設届の副本」の写しを証明書に添付する必要があります。
実務経験期間証明書:ダウンロード(PDF)
実務経験期間証明書:ダウンロード(Excel)
引用:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件の取扱いについて

引用:⑦-1 実務経験期間証明書(記載例)(経験者と勤務あり)意見反映
施術者管理研修の受講が必要
施術管理者に登録するには、指定の研修を受ける必要があります。
この研修は、講義形式で16時間(2日間)にわたって行われます。
研修方法は、現地会場またはオンラインでの対面講義が一般的です。

引用:施術管理者研修のご案内 | 公益財団法人東洋療法研修試験財団
施術管理研修を受けるまでの流れ
施術管理者の申込から登録までの流れは一般的に以下のとおりです。

施術管理者研修のカリキュラムは、連日2日間となり、合計16時間以上の受講となります。
修了証までにかかる日数は人によって差がありますが、受講後2週間程度です。
施術管理者研修の申込方法と費用は?
施術管理者研修の申し込みは、「公益財団法人東洋療法研修試験財団」のホームページから行うことになります。
まず、ホームページ内の「○○年度(令和○年度)開催日程及び会場」という目次にて、開催日程および会場のスケジュールを確認できます。
この中で「受付中」と表示されている日程から希望するものを選び、申込フォームに必要事項を入力して申し込みします。
受講申込が確定した後は、案内に従って、指定された申込用紙と受講料28,000円※を指定の振込口座に入金します。
※※2025(令和7)年4月以降
申込用紙の提出方法について、住民票などの必要書類を添付し、財団に郵送する必要があります。

施術管理研修当日の注意事項

施術管理研修では、申し込み・受講・修了後ごとに注意しなければならない点があります。
見落としがないように、ここでは注意事項について説明します。
施術管理者研修が行われる場所は?
研修は、オンラインまたは現地会場にて受けることができます。
現地会場で受講を希望する場合でも、会場は「東京」または「大阪」のいずれかになることがほとんどであります。
そのため、多くの受講者はオンラインでの受講を選択することが予想されます。
また、各研修には定員が設けられているため、早めに申し込んでおきましょう。
研修の日程と研修時間は?
研修は毎月1回開催されています。
研修は、2日間にわたり、合計16時間の講義形式で実施されます。
お昼休みが50分あり、休み時間も1時間ごとに10分ほど設けれています。
研修内容について
「職業倫理」「安全な臨床」「適切な施術所管理」「適切な保険請求」の4つのセクションを受けるものとなります。
各セクションでは、レポート作成やグループワークが含まれており、終了前の1時間に取り組む予定となっています。
研修で必要な持ち物(書類)など
研修当日の持ち物について、とくに指定はありませんが、筆記具を持参すると安心です。
オンライン受講の場合は、文字や資料をしっかり確認できるよう、画面サイズの大きなパソコンを使用することをおすすめします。
加えて、レポート作成が必要な場面もあるため、キーボードが使える環境を整えておくべきでしょう。
また、本人確認のため、自分の顔が映るWEBカメラを搭載したデバイスを必ず使用してください。
研修後、2週間程度で修了証が発行される
研修修了後、約2週間で「施術管理者研修修了証」が郵送されます。
管理施術者の有効期間は5年間であり、研修修了日の翌日が起算日となります。
なお、研修を修了するだけでは施術管理者としての登録は完了しません。
登録を完了させるには、以下の書類を地方厚生局および都道府県知事へ別途提出する必要がありますので、注意が必要です。
施術管理者の申し出に必要な書類一覧
- 施術所開設届又は施術所変更届の写し
※施術管理者が出張専門施術者の場合は、業務開始届の写し - あはき師の免許証の写し
- 施術管理者選任等証明(個人開設用)
※個人開設で施術管理者と開設者が異なる場合 - 施術管理者選任等証明(法人開設用)
※法人開設の場合 - 勤務形態確認票
- 住民票
※施術管理者が出張専門施術者の場合 - 実務経験期間証明書の写し
- 施術管理者研修修了証の写し
まとめ
本記事では、施術管理者の基本的な役割から取得の流れ、具体的な手続き方法まで詳しく解説しました。
ぜひ参考にして、開業準備をスムーズに進めてください。