鍼灸院の廃業率は高い?廃業原因と生存率を上げるために必要なポイントを解説

鍼灸院の独立開業を考える際、廃業のリスクについて不安を感じることは当然のことです。

同業者が廃業する姿を耳にしたとき、「自分もそうなってしまうのではないか」と心配になる方もいるでしょう。

鍼灸師としての技術だけでなく、経営スキルが求められるため、どうすれば良いのか分からないと苦労することも珍しくありません。

そこでこの記事では、鍼灸院の廃業率やその原因について紹介します。

また、廃業を防ぐための実践的な対策について解説します。

目次

鍼灸院の廃業率はどれくらい?

鍼灸院の開業を目指すなら、業界の実情を知っておくことが大切です。

たとえば、筑波技術大学と明治国際医療大学の調査によると、鍼灸マッサージ業者の廃業率は16.7%と報告されています。

さらに、東京商工リサーチのデータでは、2018年の療術業(鍼灸院、マッサージ業、整骨院、整体、接骨院等)の廃業数が増加傾向にあり、小規模の個人事業主が多い点も特徴です。

また、全国の鍼灸院を含む治療院数は14万件を超え、その数はコンビニの約3倍に相当します。

これだけたくさんの治療院があるなか、競争は激しくなり、開業後の集客に苦労するケースも珍しくありません。

こうした状況を踏まえ、開業を成功させるには、立地選びやお店の特徴づくり、集客方法などをじっくり考えることが大切です。

参照:あん摩マッサ-ジ指圧業の実態に関する調査研究
参照:2018年「マッサージ業、接骨院等」の倒産状況は過去10年で最多93件に急増、5年連続で前年を上回る | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/dl/kekka3.pdf

鍼灸院が廃業に陥る4つの原因

鍼灸院の経営がうまくいかない理由には、いくつかの共通する要因があります。

ここでは、主な原因を5つ挙げ、それぞれの対策について解説します。

同じ失敗を繰り返さないためにも、ぜひ参考にしてください。

資金不足に陥っている

張り切りすぎて、開業時にたくさんのお金を使いすぎてしまい、その後の経営が厳しくなるケースがよくあります。

設備や内装にこだわりすぎたり、大きな物件を選んだりすると、売上が安定する前に資金が足りなくなってしまいます。

開業直後は、院の存在を知ってもらうまでの時間が必要で、この間は思うように売上が上がらないことがほとんどです。

そのため、開業時は必要最低限の設備・費用で小さくスタートすることをおすすめします。

高額な物件や機器への投資は、売上が伸びてからでも遅くはありません。

まずは運転資金に余裕を持たせ、無理のない経営を目指しましょう。

これから初めて開業を考えている方向けに、開業時のポイントを以下の記事で解説しています。

ぜひ参考にしてください。

立地・物件選びに失敗している

鍼灸院経営で失敗する原因の1つは、立地や物件選びにおけるミスです。

「立地が7割」といわれるほど、立地は集客数を大きく左右させます。

たとえば、ターゲット層が少ないエリアやアクセスが悪いエリアだと、集客が難しく、売上が伸び悩むことが多くなります。

そのため、開業前にターゲットの数やアクセス、自分の診療スタイルに合っているかも調べて、需要が見込めるエリアを選ぶことが成功のカギとなります。

以下の記事では、立地の選び方について解説しているので、ぜひ参考にしてください。

集客ノウハウが足りていない

経営失敗の大きな原因の一つは、集客ノウハウの不足です。

実際、開業から1~3年で閉院に追い込まれる鍼灸院は珍しくありません。

技術や接客のレベルが高くても、集客がうまくいかず、資金が尽きてしまうことがあります。

開業後、患者さんが自然に来てくれるわけではないため、院の存在を知ってもらうための発信が欠かせません。

たとえば、ホームページやGoogleマップを活用し、メニューや価格だけでなく、院内の雰囲気や施術中の写真を掲載すると効果的でしょう。

長く経営をするためには、エリア内のライバル数やターゲットのニーズをしっかり分析し、それに合った集客戦略を立てることがポイントです。

鍼灸院の集客方法について、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。

競合との差別化ができていない

鍼灸院・類似業者が増えていることを背景に、同じエリア内で患者さんを取り合うケースも珍しくありません。

差別化ができていなければ価格競争に巻き込まれてしまい、十分な収益を得らず、廃業することになるでしょう。

そのため、開業する前に、自院の強みとなる差別化の部分を明確にし、患者さんが「ここに通う理由」を感じてもらう必要があります。

たとえば、あくまで一例として以下のコンセプト・診療スタイルを持つことで差別化につながるでしょう。

  1. プライベートな空間で、全身をリフレッシュできる痛くない鍼灸を提供する鍼灸院
  2. 仕事による腰痛や肩こりを得意とし、働き世代に通いやすい診療時間の鍼灸院
  3. 女性ならではの体調不良や痛みに、女性スタッフがじっくり向き合い、トータルケアする鍼灸院

自院がすぐれているのはどこなのか、選ばれるポイントは何なのかを分析することで、廃業するリスクを減らせます。

技術や知識に自信がなくても、「診療時間」や「診療スタイル」、「施術空間」「接客サービス」「アフターケア」「同じ料金で施術時間などの充実度が違う」など差別化できるポイントは数多くあります。

自院の強みを活かし、他の院とは一味違う特徴をアピールし、差別化を図りましょう。

廃業させないための4つの対策

鍼灸院開業で失敗するを紹介しました。ここでは、失敗するリスクを抑えるための具体的な対策を紹介します。

ターゲットに合った集客をする

ターゲット層に合わせた集客方法を選ぶことは、とても重要です。

集客には時間と費用が必要になり、逆に経営を圧迫しかねません。

自分はどんな鍼灸院であり、どんなことをアピールすれば患者さんに刺さるのか、自院に向いている集客をすることが大切です。

たとえば、40代以降の腰痛患者をターゲットにしているのに、学生が多いエリアでチラシを配っても効果は薄いでしょう。

学生や若い方を集客したい場合、ホームページやGoogleMapに注力すると高い集客効果的でしょう。

ターゲットに合わせて集客方法を選ぶことで、経営を圧迫することなく、高い集客効果で安定した経営となります。

集客方法について、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

リピーター獲得に力を入れる

鍼灸院の経営には、リピーターの存在がとても重要です。

リピーターが増えることで収入が安定するだけでなく、広告費を削減にもつながります。

そのため、リピーターの数と割合を把握し、どのようにしてリピーターを増やすかを考えることが大切です。

リピーターを増やすためには、まず「選ばれる鍼灸院」になることが欠かせません。

患者さんの悩みと求めていることを聞き出し、それに合わせた施術サービスを提供すれば、「この院なら安心して通える」と感じ、次回の来院につながります。

また、他の鍼灸院との差別化を図ることはもちろん、再来院を促す仕組みづくりも欠かせません。

一度来院した患者さんが満足しても、その後院のことを忘れてしまうことが多いため、思い出してもらう取り組みが求められます。

リピーターを増やしている院では、DMやSNS等を活用し、患者さんに再来院のきっかけを作っています。

患者さんにとって、「通う価値のある場所」と感じてもらえるよう、リピート対策をしっかり行いましょう。

接客・施術スキルを上げる

施術のスキルは鍼灸院経営の要であります。当然、施術スキルが低ければ、通院してもらえなくなります。

基本的な施術スキルはもちろん、物理療法や美容鍼灸の施術などでは、患者さんの状態・要望に合わせた専門スキルが求められます。

同じ症状でも、原因を見極め、最適な施術を提供することで信頼と満足度につながります。

さらに、接客・カウンセリングも欠かせません。

患者さんの悩みや希望を丁寧に聞き取ることで、安心感を与えるとともに、施術の効果を高めることができます。

こうした積み重ねが患者さんとの信頼関係を築き、選ばれる鍼灸院につながります。

だからこそ、開業後も学びを続け、新しい技術や接客スキルを磨き続けることが大切です。

経営学を学ぶ

感覚だけで経営を続けていると、集客や売上が思うように伸びず、収入が減少してしまうことにつながりかねません。

経営の知識がないと、広告や設備投資にどれくらいの費用をかけるべきか判断できず、資金を適切に管理できなくなります。

その結果、必要な資金を使い果たし、早い段階でに資金不足に陥るリスクが高まります。

そうならないためにも、経営学を学び、必要な分析・売上目標の数字を明確にし、自院に合った経営計画を立てることが大切です。

とはいえ、いきなり経営学を学ぶのは難しいと感じるかもしれません。

そこで、当サイトでは、経営の基本を学べる記事やセミナー・お役立ち資料を提供しています。

以下では、経営学に役立つ情報を掲載していますので、是非参考にしてください。

まずは、いまの経営状況を数字で見える化しよう

鍼灸院を経営するうえで、いまの経営状況を数字で把握することはとても大切です。

たとえば、「1日に何人の患者さんを施術すれば黒字になるのか」を考えるだけでも、目指すべき目標がはっきりします。

施術単価や固定費(家賃、光熱費、仕入れ等)をもとに収支のバランスを計算してみると、必要な来院数や売上目標が見えてきます。

また、患者さんの行動を分析し、広告やリピート対策を強化することで、より安定した黒字経営につながります。

こうした数字の「見える化」をすることで、経営課題がはっきりし、赤字経営のリスクを抑えることができます。

「経営における数字の見える化」には、顧客管理システムがとても役立ちます。

なかでも「鍼灸つながるカルテ®」は鍼灸院オーナーにとって便利なサービスとして挙げられます。

このシステムは、経営に必要な数字をレポート形式で簡単に確認できる機能を備えており、経営の見える化と改善にとても役立ちます。

詳しい内容は以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

鍼灸院が廃業する原因は、さまざまです。

鍼灸師としての技術はもちろん重要ですが、経営を成功させるためには、経営者としての自覚も必要です。

「自院に向いている立地なのか」「1日に必要な来院数はどれくらいか」「考えている集客方法は正しいのか」など、しっかりと分析し、失敗を避けるために戦略を立てましょう。

今回の記事を参考に、失敗のリスクを最小限に抑えていきましょう。

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