物理療法の1つとして知られている「マイクロカレント」。
物理療法を取り入れる施術所は、当たり前となってきており、マイクロカレント療法に注目する鍼灸師も増えてきました。
とはいえ、「そもそもどんな仕組み?」「どんな効果が期待できるの?」といった疑問を持ったままの方も少なくありません。
この記事では、マイクロカレントの基本的な考え方から、期待される効果、施術での活かし方までをわかりやすく解説します。
「使ってみたいけど、まだピンときていない」といった人でも参考になるので、ぜひ参考にしてください。
マイクロカレントとは?

人間の体にはもともと「生体電流」と呼ばれる弱い電気が流れています。
まだ研究段階にありますが、この「生体電流」が細胞を刺激することで新陳代謝が促され、自然治癒力を高める働きがあると考えられています。
こうした「生体電流」の仕組みにヒントを得たのが、マイクロカレント療法です。
マイクロカレント療法とは、生体電流と同じ1mA以下の微弱な電気を人工的に流し、組織の修復・回復を早めることを目的としています。
施術中に刺激や痛みをほとんど感じないため、スポーツ障害といった痛みの強い急性期に使用できるのが大きな特長です。
現在では、体に負担をかけず、自然な回復力を高める方法として、スポーツ現場や医療機関でも広く取り入れられています。
マイクロカレントの期待される効果は?

マイクロカレントで期待できる効果には、次のようなものがあります。
- 除痛効果
- 損傷組織への治癒促進
- 美容効果
①除痛効果
マイクロカレントは、損傷組織の修復をサポートすることで、発痛物質の発生を抑えることが期待されています。
また、電気刺激によって血流改善され、患部にたまった発痛物質・老廃物が流れやすくなります。
その結果、痛みや不快感がやわらぐと考えられています。
②損傷組織への治癒促進
傷ついた組織を回復させるためには、多くのエネルギーが必要となります。
そのエネルギーを供給しているのが、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる分子です。
マイクロカレントを流すことで、ATPの生成が促進されており、傷ついた組織の回復が早まるといわれています。
参照:足関節外側靭帯損傷急性期の腫脹に対するマイクロカレント刺激の効果
③美容効果
マイクロカレントには、美容面でさまざまな効果が期待されています。
微弱な電流によって血流が促進され、くすみの改善や肌のトーンアップにつながると考えられています。
また、加齢によって働きが鈍くなった細胞を活性化し、肌のターンオーバーを整えるアプローチができるとされています。
マイクロカレントは、どんな人に使われる?

マイクロカレントはさまざまな場面で使われています。
- スポーツ外傷(骨折、脱臼、肉離れ、筋肉損傷、打撲、ねんざ)
- スポーツ障害(野球肩、野球肘、オスグッド、テニス肘、シンスプリント)
- 皮膚のケガ(潰瘍、褥瘡)、炎症、急性疼痛
- 美容
- 慢性痛
①スポーツ外傷(骨折、脱臼、肉離れ、筋肉損傷、打撲、ねんざ)
スポーツ現場では、打撲や捻挫、肉離れといった外傷の回復を早めるために、マイクロカレントが活用されています。
損傷や炎症を起こした患部に対して、痛みを感じさせずに施術できることが、採用される大きな理由のひとつです。
術後における身体への負担が少ないため、継続的なリカバリ―ケアに適しています。
②スポーツ障害(野球肩、野球肘、オスグッド、テニス肘、シンスプリント)
繰り返しの動作による炎症・損傷に対して、細胞組織の回復を促すことを目的に使われています。
実際に、陸上の桐生祥秀選手やメジャーリーガーのダルビッシュ有選手をはじめ、オリンピックで活躍する多くのトップアスリートが、ケガの治療にマイクロカレントを導入しています。
プレーを続けながら治療とコンディションを両立できるケアとして、幅広く活用されています。
③皮膚のケガ(潰瘍、褥瘡)、炎症、急性疼痛
炎症や急性疼痛の場合、わずかな刺激でも痛みを感じるため、慎重な施術が求められます。
マイクロカレントは刺激がほとんどないことから、痛みの激しい患部へのアプローチができます。
医療機関では術後の創傷や褥瘡(じょくそう)、炎症の回復を目的としてマイクロカレントが取り入れられています。
④美容
マイクロカレントは、コラーゲンやエラスチンの生成を促し、肌にハリと弾力を与える効果が期待されています。
ほかにも、血行を促進してくすみを改善したり、ターンオーバーを整える目的でも使用されています。
さまざまな美容効果が期待できることから、エステサロンや美容クリニックなど、幅広く取り入れられています。
⑤慢性痛
マイクロカレントは、刺激をほとんど感じないことから、低周波治療器と組み合わせて使われることがよくあります。
損傷組織の回復を促すマイクロカレントにプラスして、筋肉の拘縮に対する筋ポンプ作用・EMSを目的とした低周波が併用して使われています。
ほかにも、鎮痛物質を意図的に出すことを目的に、複数の波形を出力できる治療器が使用されるケースもあります。
マイクロカレントに副作用はある?注意点とは?

マイクロカレントは、適切な方法で使用すれば、安全性の高い施術といえます。
通電機器に分類されるため、以下のような方には使用を控えることが推奨されています。
【禁忌・禁止】
・ペースメーカなどの特定の植込み形の電子装置を装着し
ている患者
・阻血組織
・中程度以上の浮腫のある部位
・知覚障害のある部位
・原因不明の急性(疼痛性)疾患の患者
・心臓に障害がある患者
・出血性素因の高い患者
・悪性腫瘍のある患者
・妊産婦
・皮膚の損傷、炎症部位
・有熱性疾患患者
・伝染性疾患患者
・静脈怒張の皮膚表面(静脈が浮き出る状態)
・体内に金属・プラスチック(人工骨頭、埋没くぎなど)
を埋め込んである部位
・血栓症、静脈血栓症、静脈瘤などの血管障害の恐れのあ
る患者
・頚動脈洞上
・その他、医師が不適当と認めた患者
【併用禁忌】
・心電計などの装着型医用電気機器との併用
・他の機器との併用
・外科用機器との同時接続
【警告】
・頭部を交差または通過させる使用や目、口への適用
・けい(頸)部の前面[特にけい(頸)動脈洞]に当てたり、胸郭と背中上部または心臓を横切るように電極を配置すること
・機器の改造
・電気メス(電気手術器)との同時接続
・短波治療器又はマイクロ波治療器との近接した操作
・胸部近辺への電極の装着
万が一施術中に痛みや違和感を感じた場合には、すぐに施術を中止しましょう。
鍼灸師が使う機械は2つ。経皮タイプ・鍼通電タイプ
鍼灸師が使う電気機器には、「経皮タイプ」と「鍼通電タイプ」の大きく2つがあります。
ここでは詳しく紹介します。
①経皮タイプ

メリット | デメリット |
---|---|
広範囲に通電アプローチできる 感染リスクが低い 使い方が簡単で、手間が少ない | 皮膚の抵抗で電流が弱まりやすく、深部まで届きにくい 多毛部位や汗などでパッドが外れやすい 刺激の範囲が広いため、ピンポイント治療には不向き |
経皮パッドは、広い範囲に電気刺激を届けられるため、複数の部位を同時に施術できます。
また、使い方も簡単で、短時間でのケアに向いています。
ただし、皮膚の抵抗を受けやすいため、深い部分まで電気が届きにくいというデメリットもあります
②鍼通電タイプ

メリット | デメリット |
---|---|
狙った部位へのピンポイント治療に向いている 皮膚の抵抗を受けにくく、より正確に通電できる 深層筋や神経系など、深部へのダイレクトなアプローチが可能 | 鍼を刺すため、感染リスクがある 施術時、患者は身動きできない 苦手な患者には受け入れづらい(刺激・恐怖感) |
鍼通電は、経皮パッドに比べ、手間がかかるデメリットがあります。
しかしその反面、狙った深部(深層筋や神経系など)へのピンポイント治療できる大きなメリットがあります。
通電の周波数や刺激の強さを調整することで、鎮痛物質の分泌を促したり、筋緊張をやわらげる作用を意図的に引き出せるとする臨床研究も報告されています。
皮膚抵抗を受けにくい鍼通電では、こうした刺激設定をダイレクトに患部へ届けやすく、精度と再現性の高い治療が期待できます。
まとめ
マイクロカレントは、痛みの少ない電気刺激として、スポーツ外傷や慢性痛、美容まで幅広い分野で活用されています。
回復力を高めるアプローチとして、さまざまな施術現場で目に触れることでしょう。
「導入を検討してみたい」「使い方を詳しく聞きたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。