「鍼灸院で漢方なども扱えるようになりたい」
そんな理由で、登録販売者の資格取得を考える方は多くいます。
しかし、登録販売者になって薬(漢方)を取り扱えるようになるには、必要なステップが多いため、わかりにくいかもしれません。
本記事では、鍼灸師が実際に登録販売者として、院内で薬(漢方)を取り扱えるまでに必要な流れを解説します。
ぜひ、参考にしてください。
登録販売者とは?

登録販売者は、第2類・第3類の一般用医薬品(市販薬)を販売できる専門資格です。
2009年の改正薬事法(現在の薬機法)改正により、薬剤師でなくても第2類・第3類の市販薬を扱えるようになりました。
販売できない「第1類医薬品」は薬剤師のみに限られますが、これは医薬品全体のごく一部(10%未満)であります。
第2類・第3類の一般用医薬品(市販薬)は、医薬品全体の約90%以上といわれ、登録販売者となれば販売することができます。

引用元:ユーキャン公式HP
登録販売者は誰でも受けられる

登録販売者試験を受けるには、学歴や実務経験が必要でした。
しかし、2015年から受験資格が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。
※学歴・職歴すべて不問になりました。
鍼灸院で登録販売者資格を活かすメリット

鍼灸師が登録販売者になると、施術や経営において、さまざまなメリットがあります。
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
メリット①漢方薬や市販薬の提案ができる
来院される患者さんの多くは、すでに何らかの薬や湿布を使っていることがよくあります。
そのため、医薬品の知識が役立つ場面がとても多いです。
カウンセリングだけでなく、薬の情報を手掛かりにすることで、体の状態・不調の原因がより掴みやすくなります。
その分、施術の選択もしやすくなり、判断の精度もグッと高まります。
さらに、「鍼灸施術 × 薬の知識」の両面からサポートすることで、施術だけでは補いきれない部分もカバーでき、患者満足度の向上につながります。
メリット②薬も相談できる鍼灸院として差別化できる
鍼灸院は広告規制により、「肩こり」「腰痛」といった症状名を看板やのぼりに出すことができません。
しかし、薬店として薬の効果・効能・症状名を掲げることはできます。
「○○が痛い」「なんとなく体調が悪い」「病院に行くほどじゃないけど不安」といった人にとって、薬店は気軽に立ち寄れる存在となります。
【“まず薬店”という新しい来院パターン】
- 薬店にて相談
- 症状を聞き、施術が必要と判断
- 併設の鍼灸院を案内
- 鍼灸院にて施術
この流れによって、これまで鍼灸院と接点のなかった層の来院につながる可能性が広がります。
実際に、整骨院では全国展開のドラッグストアと連携し、薬と施術を組み合わせた新たな集客モデルをすでに導入しています。
整骨院とネイルサロン、ツルハが併設を本格化 – 日本経済新聞
メリット③新たな収益の柱ができる
施術だけに頼らない、収益の仕組みをつくることができます。
「施術+商品購入」により、客単価がグッとアップします。
医薬品や漢方、湿布などは、「必要なケア」として受け入れられやすく、押し売り感が出にくいことがメリットです。
また、患者さんにとっても「使い切ったらまた買いに行こう」といった自然な再来院のきっかけになります。
登録販売者試験の内容は?受験から合格までの流れ

登録販売者になるには、登録販売者試験を受ける必要があります。
合格までの流れを詳しく解説します。
試験は年1回、都道府県ごとに実施される
登録販売者試験の願書は、試験のおよそ4カ月前から配布が始まります。
入手方法は、以下の2パターンです。
【願書の入手/提出方法】
- 直接入手する
各地域の保健福祉事務所・健康福祉センター・薬務課などで入手する - インターネットからダウンロードする
都道府県のホームページより、願書をダウンロード・印刷する
願書の配布は試験のおよそ4カ月前から始まります。
願書を受け取ったら、写真や受験料(15,000円程度)の支払い証明書(収入印紙や振込証明など)を添えて提出します。
自治体によっては郵送のみ受付としている場合もあるので注意が必要です。
詳しくは、各都道府県のホームページを確認してください。
【受験票の受け取り】
試験日の約1カ月前に、受験票が自宅に届きます。
届いたら、記載内容に誤りがないか確認し、試験当日まで大切に保管しておきましょう。
もし、試験の2週間前になっても届かない場合は、各都道府県の担当窓口に問い合わせることをおすすめします。
試験内容と合格ボーダーライン
登録販売者試験では、5つの分野から計120問でマークシート方式の筆記試験となります。
試験時間は合計240分(4時間)です。
試験項目 | 出題数 | 試験時間 |
---|---|---|
第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 | 20問 | 40分 |
第2章 人体の働きと医薬品 | 20問 | 40分 |
第3章 主な医薬品とその作用 | 40問 | 80分 |
第4章 薬事関係法規・制度 | 20問 | 40分 |
第5章 医薬品の適正使用・安全対策 | 20問 | 40分 |
合計 | 120問 | 240分 |
※各自治体によって、必ずしも1~5章に順に問題が出るわけでありません。
試験は午前・午後に分かれ、各120分ずつ行われます。
昼休憩は都道府県ごとに異なり、45分または1時間程度のスケジュールです。
合格基準(2つの条件をクリアする必要あり)
登録販売者試験の合格には、次の2つを両方クリアする必要があります。
【2つの合格基準】
- 全体の正答率が70%以上
- 各分野の正答率が35%~40%以上(都道府県によって異なる)
薬の知識を広く問われるため、勉強時間として150〜200時間(3~6カ月)くらいを目安としましょう。
登録販売者試験の過去問・解答は、各都道府県のホームページに掲載されています。
試験前の対策として、事前に解いておきましょう。
合格後、すぐには販売できない

登録販売者試験に合格しても、すぐに医薬品を販売することはできません。
販売を始めるために必要な登録手続き・許可について解説します。
合格後、「販売従事登録」が必要
登録販売者試験に合格しても、すぐに登録販売者として薬を販売できるわけではありません。
合格後、登録販売者として働ける勤務先を探し、「販売従事登録」を行う必要があります。
医薬品を販売しているお店で働きます。
例)
・ドラックストア
・薬局
・コンビニ
・スーパー
・ホームセンター等
保健所に対して、「市販薬販売の業務に就く」旨という意味で「販売従事登録」を行います。
登録完了後、保健所または郵送で「販売従事登録証」を受け取ることができます。
ここで、ようやく薬の販売ができるようになります。
販売従事登録に必要な書類一覧
登録販売者販売従事登録の申請には、以下の書類が必要です。
- 登録販売者試験の合格通知書(原本提出)
- 販売従事登録申請書(各都道府県HP・保健所で入手)
- 医師による診断書(診断日から3ヶ月以内のもの)
- 雇用関係を示す書類(雇用証明書など)
- 登録手数料(収入印紙)
- 本籍の記載がある証明書(以下のいずれか1つ・発行から6ヶ月以内)※1
→戸籍謄本/抄本
→戸籍記載事項証明書
→住民票(本籍の記載があるもの)
合格通知書の原本は申請時に回収されてしまうため、コピーして手元に残しておきましょう。
※1登録販売者試験の申請から氏名や本籍に変更があった場合。
実務経験1,920時間が必要

実務経験が不足している場合、販売従事登録をしても医薬品販売はできません。
正規の登録販売者になるためには、「実務(業務)従事証明書」等の入手が必要となります。
「実務(業務)従事証明書」を得るために、店舗管理者又は管理代行者の要件を満たした薬剤師か、登録販売者の管理と指導の下、医薬品販売の実務経験を積まければなりません。
参照元:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」(【厚生労働省】令和5年3月31日薬生発0331第14号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)
【実務従事証明書をもらうための条件】
- 実務経験:直近5年以内に通算1年以上かつ1,920時間以上
- 外部研修:年に1度、集合研修またはeラーニングの外部研修を受ける
これらの条件をクリアしたら、管轄の都道府県ホームページにて以下の申請用紙をダウンロードしましょう。
- 業務従事証明書
- 実務従事証明書
- 勤務状況報告書
ダウンロード後、勤務先に記入してもらうよう依頼し、記入してもらうことで、正規の登録販売者として働けるようになります。
医薬品販売業の届出(保健所)が必要
鍼灸院にて薬を販売する場合、店舗所在地の都道府県知事からの「(医薬品)店舗販売業」の許可が必要です。
店舗販売業許可申請時に必要な書類は、以下のとおりです。
- 店舗販売業許可申請書
- 平面図
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 医師の診断書
- 実務(業務)従事証明書
- 勤務状況報告書
- 勤務状況表・シフト表
- 組織図
申請書類は自治体ごとに必要なものが異なるため、直接、管轄の保健所に確認してください。
鍼灸院と薬店を併設する場合、鍼灸院と薬店の2つの構造設備基準をクリアしなければなりません。
この点もあわせて、保健所に相談の上、申請を進めていきましょう。
まとめ
鍼灸院で漢方など販売するには、「正規登録販売者の登録」「(店舗)販売業許可」が必要となります。
登録販売者になるには、試験に合格するだけでなく、その後、ドラックストアなどに勤務する必要があります。
また、自院で販売するには、販売業許可が求められるため、3年ほどかかかると見てよいでしょう。
医薬品販売には多くの規定があるため、自院に取り入れることができるのか、あらかじめ確認しておきましょう。