鍼灸院の領収証は必要?テンプレートと書き方について解説

鍼灸院経営する多く方は、「領収証の書き方がわからない」「税務署から指摘を受けるのが心配」「キャッシュレスやインボイス対応ってどうすればいいの?」とお悩みではないでしょうか?

特に鍼灸院の場合、記載すべき項目や注意点が多く、不安やストレスを感じるのは当然のことです。

また、法的リスク、患者トラブルを避けるために準備は欠かせません。

この記事では、実務に即した領収証の書き方と注意点をわかりやすく解説します。

さらに、すぐに使えるテンプレートや具体例もご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

鍼灸院は領収証の交付が必要?

鍼灸院では、患者さんから領収証の発行を求められることがよくあります。

患者さんに安心して利用してもらうために、領収証のルールについてわかりやすく解説します。

領収証の交付は義務である

原則として、患者さんから領収証を求められた場合、必ず発行しなければなりません。(民法第486条)

医療費控除や福利厚生の手続きに使われることもあり、実費・保険いずれの場合でも領収証の発行は義務となります。

民法第486条

  1. 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
  2. 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。

引用:民法|条文|法令リード

インボイス対応の領収証が求められるケースもある

患者さんの中には、インボイス対応の領収証を求める場合があるかもしれません。

しかし、インボイス対応の領収証を発行するには、インボイス登録が必要です。

もし、鍼灸院がインボイス未登録の場合は、「当院ではインボイス対応の領収証は発行できません」と事前に伝えておくことでトラブルを防ぐことができます。

キャッシュレス・クレジット決済における領収証の発行は可能

電子マネーやクレジットカード、QRコード決済を利用する患者さんが増えています。

実費の施術だけでなく、保険施術でもキャッシュレス決済を選ぶケースは増えていくでしょう。

法律上、保険施術の支払いにもキャッシュレス・クレジット決済が認められており、電子における領収証の対応が可能です。

いまのキャッシュレス・クレジット決済システムでは、支払いと同時に領収証を発行できることが多いですが、一部では発行できない場合もあります。そのため、事前に確認しておくことが大切です。

参照:令和2年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた調査事業)報告書
参照:医療機関等における一部負担金のキャッシュレス支払いについて
参照:キャッシュレス決済で保険施術分の支払いができますか? – 全国柔整鍼灸協同組合

鍼灸院における領収証の書き方について

必要な記載項目やテンプレート、用意するときのポイントについて解説します。

領収証に記載すべき項目とは?

鍼灸院ならではの決まった形式はありませんが、記載すべき項目はあります。

  • 日付(金銭の受け渡しをした日付)
  • 宛名(患者さんの名前)
  • 金額(施術代)
  • 但し書き
  • 発行元の記載(鍼灸院名と住所)
  • 収入印紙

①日付
施術を行い、金銭の受け渡しをした日付を記入します。

②宛名
施術を受けて支払った氏名または、患者さんの会社名を記入します。

③金額
施術代として支払われた金額を記入します。

④但し書き
実費・保険施術のどちらでも医療費控除の対象となります。
目的が「治療なのか」によって、対象の判断がされます。
そのため、体調管理やリラクゼーションを目的とした医療費控除の対象になりませんので注意が必要です。
書き方について、「治療代として」や「○○部の痛み軽減のための治療」など施術内容を詳しく記載することをおすすめします。

【国税庁:医療費控除の対象となる医療費】

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)

参照:国税庁

⑤発行元の記載
医療費控除には、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師による施術」である証明が必要となります。
そのため、あはき・マッサージの国家資格を保有しているとして「屋号名」「鍼灸師名(または代表者)」を明記しておきましょう。

⑥収入印紙の記載
5万円以上の支払いに限り、収入印紙が必要となります。

インボイス対応の領収証を用意するには?

インボイス対応の領収証を用意するには、事業者登録をする必要があります。

事業者登録は、税務署にて登録ができます。

登録時に「適格請求書発行事業者登録番号」という登録番号を交付されます。

上記の登録を済ませた上で、以下の2点を追加するとインボイス対応の領収証となります。

①登録番号(適格請求書発行事業者登録番号)
登録番号と記載しても問題ありません。登録番号の欄に、交付された「T」から始まる自院の登録番号を記載してください。

②消費税率ごとの金額
消費税の税率(消費税率:10%、軽減税率:8%)ごとに分けて、それぞれ記載します。

実際の記入例について、のちほど解説します。

領収証テンプレートの入手先は?

鍼灸院の領収証は、コンビニなどで売られている一般的な領収証を使っても問題ありません。

ただし、「領収証に記載すべき項目とは?」で解説した6つの項目が必要となりますので、必ず確認しましょう。

ここでは、ネット上で無料ダウンロードできる領収証テンプレートサイトを紹介するので、ぜひご活用ください。

すぐに使える領収書テンプレート(エクセル・Excel)無料・登録不要 | ビズ研

【税理士監修】領収書テンプレート・ひな形(エクセル) | 請求書作成ソフト「マネーフォワード クラウド請求書」

テンプレート16種の無料領収書を公開【登録不要】-使い方と収入印紙についてもシンプルに解説します | ワカルニ

領収証の明細について

物販の場合、軽減税率に注意

インボイス対応の領収証を発行する際、軽減税率の記載に注意が必要です。

特に、セルフケア用品やサプリメント、飲み物などの院内物販は軽減税率の対象となります。

たとえば、施術料10,000円を受けたあとに、物販を2つ購入したケースを例に解説します。

ここでは、施術料に税率10%、物販に軽減税率8%とします。

【施術料】
税抜価格:10,000円
税込価格(10%):11,000円

【物販購入】
税抜価格:商品A 1,000円 + 商品B 5,000円 = 合計6,000円
軽減税率適用(税込8%):
商品A:1,080円(消費税80円含む)
商品B:5,400円(消費税400円含む)
合計(税込):6,480円

【内訳】
・施術料(10%適用分)
税抜金額:10,000円
消費税(10%):1,000円

・物販(8%適用分)
税抜金額:6,000円
消費税(8%):480円
商品A:80円
商品B:400円

消費税率ごとに金額を分け、明確に記載しましょう。

施術料(10%)と物販(8%)の金額をそれぞれ切り分けて書くことがポイントです。

保険施術では明細書を求められることも

鍼灸(あはき)・マッサージにおける保険施術では、明細書を求められるケースもあります。

保険の不正請求を防ぐことを目的に、患者さんから求められた際、領収証だけでなく、明細書まで交付する取り決めについて議論されています。

そのため、患者さんから求められた際、領収証だけでなく、施術ごとの料金について記載した明細書を用意しなければいけない場合があるのであらかじめ用意しておくことをおすすめします。

参照:第18回社会保障審議会医療保険部会 あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会議事録(2018年1月31日)

明細書のテンプレートを紹介

鍼灸(あはき)・マッサージにおける明細書について、厚労省にてテンプレートを無料ダウンロードできます。

保険施術におけるルールについても、記載されているため、ぜひ参考にしてください。

参照:あはき療養費の不正対策及び受領委任制度による指導監督の仕組みの導入

まとめ

今回は、鍼灸院における領収証の作成方法から書き方まで解説しました。

領収証は、患者さんにお願いされたら、必ず発行しなければなりません。

鍼灸院専用の決まった形式はないので、一般的な領収証を使っても大丈夫です。

領収証はお金のやり取りを証明する大切なものです。正しく発行することで、患者さんとの信頼を守り、トラブルを防ぐことができます。

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